割増賃金・残業代の請求

さいとうゆたか弁護士

1 割増賃金・残業代の請求

一日8時間などの法定の労働時間を超えて労働をした場合には、時間外労働として25パーセントの割増賃金、休日労働については35パーセントの割増賃金、午後10時から午前5時までの深夜労働については25パーセントの割増賃金が発生します。これは、通常の労働時間の賃金又は労働日の賃金(時間外割増賃金は除かれます)を基準に計算をすることになり、家族手当、通勤手当、別居手当、住宅手当、賞与等は算定において考慮されません。

中小事業主以外については、1ケ月60時間を超える時間外労働の割増賃金は50パーセントとなります(中小企業についての例外措置は2023年3月末をもって廃止されることとなっています)。60時間を超える部分については、労使協定により、割増賃金の支払いではなく、有給の休暇を与えることもできるとされています。

割増賃金は通常の労働時間の賃金に上記割合の金額を足したものとなります。

割増賃金の計算においては、家族手当、通勤手当、賞与は算定基礎とならないので注意が必要です。

企業によっては、法律で義務付けられていない場合についても割増賃金を払うこととしている場合があります。

7時間を超えた労働分について割増賃金を払うような場合です。

このような割増賃金については、法律所定の割増率での割増賃金を払う必要はないことになります。

2 割増賃金・残業代と時効

割増賃金は2年で時効となります。ですから早めに請求することが必要です(2020年4月以降のものは3年)。

なお、福島地裁白河支部平成24年2月14日判決は、労働者である技能実習生を、脱法目的で研修生として扱ったという事例において、割増賃金請求権等について時効の主張はなしえないとしました。

また、福岡地裁令和1年9月10日判決は、割増賃金・残業代の請求を妨害する場合や、割増賃金が具体的に発生していることを認識しながらあえて支払わない場合に不法行為が成立するとしています(時効は3年となります)。

このように、労働者による割増賃金・残業代の請求を妨害するような場合、割増賃金が発生していることを知りながらあえて払わないような場合、時効の主張が認められない可能性があります。

 

3 残業時間の算定の仕方

割増賃金を請求するにしても、会社の管理する労働時間と実際の労働時間にずれがあることが多く、そのような場合には労働者が労働時間を立証しなければなりません。

ですから、普段からパソコンの操作記録を保存しておくなど、労働時間についての記録をとっておくことが重要です。

なお、労働時間についての証拠を集める際、会社が管理しているものを持ち出す必要が生じることもありえます。

この点、労働時間認定にとって重要な意味を持つ日報の持ち出しについて、東京地裁令和1年7月24日判決は、日報が労働時間認定にあたり欠くことのできないものであったこと等から、日報の証拠能力は否定されないとしています。よほど特殊な場合を除き、労働時間認定の必須な証拠を持ち出したからと言ってその証拠能力が否定されることはないと思われます。

4 割増賃金が生じない例外的場合

管理監督者

割増賃金の請求に対し、使用者側が、当該労働者が管理監督者であったなどとして割増賃金が発生しないと主張することもあります。

経営に関する決定に関与する、労務管理についての指揮監督権がある、自分の出退勤などについて裁量がある、管理監督者にふさわしい賃金が与えられているなどの場合に管理監督者とされます。

しかし、裁判例上、かなり幹部クラスでない限り管理監督者には該当するとはされていないので、多くの場合には割増賃金の請求ができると思われます。

深夜割増賃金については管理監督者についても割増賃金は発生します。

裁量労働制

裁量労働制の場合、実際の労働時間ではなく、所定の時間労働したとみなされます。

専門業務型裁量労働制

をご参照ください。

変形労働時間制

変形労働時間制度が適用された場合、1日8時間・週40時間を超えて労働しても残業代が発生しない場合があります。

1ケ月単位の変形労働時間制

1年単位の変形労働時間制

をご参照ください。

高賃金労働者

高賃金労働者については時間外労働の対価を基本給の中に含めてもよいとする裁判例(東京地裁平成17年10月19日判決)もありました。

しかし、最高裁平成29年7月7日判決は、通常の労働時間に対応する分と割増賃金が判別できない年俸の場合、割増賃金を払ったことにはならないと判断しています。

5 新潟で割増賃金・残業代の請求は弁護士齋藤裕へ

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