固定残業代についての最高裁平成30年7月19日判決

最高裁平成30年7月19日判決は、固定残業代についての判断を示しています。

もともと、この事件について、東京高等裁判所は、「いわゆる定額残業代の支払を法定の時間外手当の全部又は一部の支払とみなすことができるのは、定額残業代を上回る金額の時間外手当が法律上発生した場合にその事実を労働者が認識して直ちに支払を請求することができる仕組み(発生していない場合にはそのことを労働者が認識することができる仕組み)が備わっており、これらの仕組みが雇用主により誠実に実行されているほか、基本給と定額残業代の金額のバランスが適切であり、その他法定の時間外手当の不払や長時間労働による健康状態の悪化など労働者の福祉を損なう出来事の温床となる要因がない場合に限られる」と固定残業代が残業代の支払いとして認められる要件について基準を示していました。

これに対し、最高裁は、固定残業代が残業代として認められるために東京高裁が示す要件が満たされることは必須ではないと判断しています。

その上で、「雇用契約においてある手当が時間外労働等に対する対価して支払われるものとされているか否かは、雇用契約に係る契約書等の記載内容のほか、具体的事案に応じ、使用者の労働者に対する当該手当や割増賃金に関する説明の内容、労働者の実際の労働時間等の勤務状況等の事情を考慮して判断すべきである」としています。

具体的には、当該事案において、固定残業代が残業代であることの説明がなされていたこと、固定残業代が実際の残業時間と齟齬していないことなどを踏まえ、固定残業代を残業代の支払いとみなしうるとしました。

説明などの要件は使用者においていくらでも作出できるのであまり意味はないかもしれません。

しかし、固定残業代と実際の残業時間の齟齬(そしてそれについて精算がなされていないこと)については、最高裁判決を踏まえても固定残業代の残業代性を否定する大きな武器になる可能性があります。

労働者保護の観点からは後退した判決と言えますが、今後活用の余地がないとまでは言えないでしょう。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です