加害者の悪質性と慰謝料(交通事故)

交通事故

1 交通事故被害と慰謝料

交通事故により人身被害が発生した場合、死亡、傷害・障害の重さ、治療期間・回数を主な要素として損害額が算定されます。

しかし、その他、加害者の悪質性が慰謝料額に反映することもあります。

以下、どのような場合に加害者の悪質性が慰謝料額に反映するのか、みていきます。

2 事故態様の悪質さと慰謝料

交通事故で被害者が死亡した場合、赤本では死亡慰謝料は2000から2800万円とされます。

しかし、これはあくまでも目安であり、それを超える場合(下回る場合)もあります。

例えば、秋田地裁平成22年7月16日判決は、以下のア、イような事情が認められる事例において、死亡慰謝料3400万円を認めています。

同判決では、

ア 被告Y1及びその運転態様
(ア) 被告Y1は,衝突事故を起こした場合,極めて重大な結果を発生させ得る10トンの貨物自動車の職業運転手であり,通常の自動車運転手に比べても高度な注意義務が要求されていたこと
(イ) 被告Y1は,はみ出し禁止区間である上に,降雪の影響により路面状態の悪い片側1車線の道路のトンネル入口付近で追越しをして本件事故を起こしているが,そもそもこのような状況で追越しを行うこと自体が危険極まりなく到底許されないものであること
(ウ) 被告Y1は,本件事故前に,先行車両への過剰な接近と左右への進路変更の繰り返しという,先行車両に対して威圧を与える,いわゆる「あおり運転」をし,その「あおり運転」の果てに(イ)のような無謀な追越しに及んで本件事故を起こしているのであって,自動車を安全に走行させるという基本的な意識が欠如していたといわざるを得ないこと
(エ) 本件事故現場付近は,見通しも良く,対向車線を進行してくる対向車を発見することは容易であったにもかかわらず,被告Y1は,対向車線の安全をほとんど確認することなく進行を続けた上,本件事故現場でも安全確認せず,いきなり追越しを行ったため,本件事故を発生させたものであること
が考慮され、かなり高額の慰謝料となっています。

 

つまり、加害者の運転の悪質性が重視されていることが分かります。

ひき逃げ、無免許運転、酒酔い運転、信号無視、極端なスピート違反、携帯のながら運転、センターオーバーがあったような場合、慰謝料額が増額される可能性があると言えるでしょう。

 

3 事故後の加害者の態度

事故後の加害者の態度が悪質な場合も慰謝料額が増額される可能性があります。

東京地裁平成16年2月25日判決は、以下の事情があることを理由として、事故後における加害者の悪質性を考慮し、計3100万円というかなり高額な死亡慰謝料を認定しています(なお、事故態様自体も、酒酔い、反対車線に進入、20キロメートル以上速度違反等、かなり悪質です)。

・加害者は救急車等が到着するまで約20分間,加害車両内に閉じこもり,救急車到着後,車外に出て,携帯電話をかけたり,小便をしたり,煙草を吸ったりするだけで,被害者に対する救助活動を一切しなかった。
・加害者は,通夜,葬儀,四十九日,一周忌のいずれの機会にも,遺族である原告らを慰謝するに十分な対応を採っていない。

・加害者は,捜査段階において,自らの罪を免れるため,被害者がセンターラインを先にオーバーしてきたなどと不自然な供述を繰り返すなど,反省の態度がみじんも認められない。

その他、罪証隠滅なども慰謝料増額事由となるでしょう。

4 どのくらい慰謝料額が増額されるか?

加害者の悪質性によりどの程度慰謝料額が増額となるでしょうか?

この点、髙取真理子裁判官「慰謝料増額事由」(赤本2005年版)は、通常の慰謝料の2~4割増し程度に収まるというのが目安だとします。

裁判例の実勢に合致していると思われます。

ただし、悪質さの度合いに応じて、この目安を超えることもありうるところです。

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