家からの締め出しと不法行為・家に戻る方法(離婚)

離婚問題

1 家からの締め出しと不法行為(離婚)

夫婦関係が悪化した場合、配偶者の一方が鍵を取り替えるなどして他方配偶者が家に入れなくすることがあります。

このような事案についての判決である東京地裁平成30年1月25日判決は、以下のとおり鍵の取替えが不法行為に該当するとしています。

 

「Aは,平成26年8月3日から同月5日までの予定で本件マンションを離れて原告ら宅に滞在していたところ,同月4日,突然被告から離婚の申入れを受け,もう一緒には暮らせないので同月5日に予定どおり本件マンションに帰ることはできないと告げられるとともに,離婚協議中は二人とも本件マンションに入らないこととするために鍵を替えることを提案され,同月6日頃には実際に被告が鍵を替えたことから,それ以降本件マンションに立ち入ることができなくなったことが認められる。本件マンションは被告とAが婚姻後に共同で購入したAの生活の本拠であり,Aは,3日間の予定でそこを離れていただけであるから,そのような生活の本拠に対してAが有する居住権は法的に保護されるべきものであり,Aを突如生活の本拠に入室できない状況に陥らせた本件行為1は,Aの居住権を侵害する不法行為法上違法なものであったといわざるを得ない。」

 

このように、同判決は、Aが3日間マンションを離れていたことを理由の1つとしています。

ですから、家を出てから数ケ月たったような場合についてどうかということについては判然とはしません。

家を出てから数ケ月たったとしても、従来から生活の本拠であったことを強調すれば、離婚をしておらず、荷物もあるのであれば、居住権がなくなるとはいえず、鍵の取替えは不法行為となる可能性はなくならないとも考えられます。

他方、離婚し、財産分与により、その不動産の所有権が一方配偶者のものとなった場合、他方配偶者に居住権があるとはいえないでしょうから、鍵を取り替えても不法行為とはならない可能性が大きいでしょう。

配偶者が家を出てから、財産分与により不動産の帰属が固まるまでの間はグレーゾーンの状態にあり、鍵を取りかえることには慎重であるべきでしょう。

ただし、DV保護法により保護命令が発令され、他方配偶者が住居からの退去を命じられている間においては、当該不動産に居住ができないことが法律的にはっきりしているので、鍵の取替えが不法行為とはならない可能性はあると考えます。

2 占有回収の訴え

なお、一方配偶者が他方配偶者から家を追い出された場合、占有回収の訴えにより帰宅をはかる方法があります。

この点、東京地裁平成17年3月22日判決は、夫が妻の荷物をマンションから出し、鍵を取り換えたという事案について、共同占有のために夫に居室を引渡すことを命じました。

同判決は、

「①妻は,夫と結婚し本件居室に居住していたこと,②妻は,妻の母親が病気のため,平成15年ころから,度々実家に戻って母親の看病をし,本件居室を空けることが多くなり,その時々に必要な衣類等を持ち帰ったこと,③しかし,平成16年2月13日ころの時点において,妻及び長男の衣類,その他の所持品が多数あり,それらの荷物を被告が本件マンションの207号室に降ろしてしまったことからすると,妻及び長男がほとんど本件居室に住んでいなかったとしても,本件居室の中にその所持品が多数あったのであり,原告の占有があったことは明らかである」として、妻がマンションにあまりいなかったとしても、荷物があったとして、妻の占有を認めました。

そして、妻が占有を放棄したわけでもないのに、夫が占有を侵奪したとして、夫に居室の引渡しを命じました。

このように、家からの締め出し事案において、裁判により家に戻ることができる場合もあります。

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