AIによる過失割合判定について

交通事故

損保ジャパン日本興亜は、AIを活用したドライブレコーダー映像の分析による責任割合自動算定システムの共同開発を行うと合意しました。

これは、AIを利用し、ドライブレコーダーの映像を解析し衝突事故を再現、それをもとにした過失割合の判断を行うというもののようです。

交通事故で、被害者にも過失があった場合、加害者に全損害を負わすことなく、一定割合を負担させないということになります。それを過失割合といいます。

過失割合判断の大きな要素は衝突事故の状況ですから、AI技術により衝突事故の再現ができれば、過失割合の再現が容易にはなるでしょう(酒気帯びなどの要素はドライブレコーダーからは捕捉できませんし、ある程度の手入力での情報補足は不可避とおもわれます)。

しかし、事故態様を確定したあとの、どの程度の過失割合とすべきかの判断をAIにゆだねることの実現可能性、許容可能性についてはきちんと議論をすべきと思います。

例えば、所定より小回りで右折をする早回り右折については過失があるとされます。

しかし、どの程度小回りだと早回り右折と判断されるか、明確な基準があるわけではありません。

このようにAIによる判断の前提となるルール自体が不明瞭な部分がありますので、AIによる過失判断はかなり大雑把なものとならざるを得ないでしょう。

そうはいっても、単純な事案についてAIで(裁判所の判断と近いという意味で)「正確」な判断をなしうる可能性は否定できないと思います。

AIによる過失割合判断の一番大きな部分は、人生にも関わりかねない過失割合の判断をAIに任せてよいのかどうかという許容性の問題です。

交通事故訴訟においては、当初は明確な基準もなく、裁判官が個々の事情に応じて損害額や過失割合などを決めていました。

それが次第に損害額や過失割合の基準が定められ、かなり定型的な判断がなされるようになりました。

交通事故が多発する状況において公平な裁判をするため、定型化自体一概に否定できるものではありません。

しかし、それでも重大事故の被害者を中心に、定型的な交通事故処理について不満の声が強く寄せられてきました。

その代表的な訴えが二木雄策「交通死」でした。

裁判所はそのような声も意識しながら、不十分ながらも個々の事情を考慮する判断をしてきたと思います。

結果的には定型的な判断とかわらない判断であったとしても、個別的な事情を検討はしたという事実(外見かもしれませんが)が結論の正当性を支えていたと思います。

そもそも死亡慰謝料は〇円、この類型の事故の場合過失割合は〇:〇という基準(のようなもの)があったとしても、突き詰めて考えてその正当性を支える確かな根拠はありません。

その基準に正当性を与えることができるとすると、両当事者が主張立証をぶつけあう裁判の場で個別事情も検討したうえで一定の結論が出され、その結論をもとに基準がつくられ、かつ、それが日々の裁判の中でまた両当事者の主張立証により検証にさらされているということに尽きると思います。

それがAIが過失割合を判断するということになると、過失割合判断、ひいては損害額判断の正当性や社会的受容性すら低下させることにつながるのではないかと考えます。

今回、問題となっているのは、あくまでも交渉場面における一方当事者による過失割合判断にAIを導入するということでしかありません。

被害者としては保険会社の提案を拒否すればよいだけかもしれません。

しかし、現実には保険会社の提示する賠償額をそのまま受け入れる被害者が少なくないのも現実です。

死亡事故も含めた被害者が、AIの判断をそのまま受け入れざるを得ないという事態は望ましいとは思いません。

弁護士が交通事故被害者の代理人として、保険会社と対峙し、適正な賠償を実現することが一層求められます。

また、仲裁や示談あっせんなども含め、第三者が判断する場面における過失割合判断のAI化には慎重であるべきでしょう。

欧州一般データ保護規則(GDPR)は、人は重要な事柄についてAIなどによる自動化されたプロセスのみによる決定に服しない権利を持つとしています。

今後、AIによる自動決定が世の中に広まっていきます。

日本でもAIによる自動決定がどこまで許されるか、立法的な議論も必要です。

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