GPSによる不倫調査とストーカー

離婚問題

最近ではGPSにより不貞・不倫の調査を行う方も増えており、その調査結果が不貞・不倫の認定の上で重要な証拠となることもあります。

しかし、他方、GPSの利用などがストーカーとして処罰などされる可能性もあることには留意が必要です。

福岡高裁平成29年9月22日判決は、GPSを利用して不倫調査をした件についてストーカー規正法違反となるとしました。

判決文のうち重要な部分は末尾に引用しました。

同判決は、不貞調査目的だからといってストーカー規正法による処罰対象から外れることにはならないとしました。

その上で、この事案では、調査結果を用いて自動車に張り紙などをしていることを踏まえ、恋愛感情が満たされなかったことについての怨恨を晴らすなどの目的を認定しています。

GPS調査自体でただちにストーカー規正法違反とはならないでしょうが、その調査結果を慰謝料や離婚請求以外に利用した場合、処罰対象となるということには留意が必要です。

離婚、不貞、不倫でお悩みの方は、弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください。

同判決は、「ストーカー行為は,対象者に不安を覚えさせるとともに,行為がエスカレートして凶悪犯罪に発展し,対象者の身体,自由又は名誉に危害を与える恐れがある行為であり,ストーカー規制法の目的は,こうした凶悪犯罪等を未然に防止し,国民が安全で平穏に暮らせる状態を確保することにある。別居中の配偶者間においては,不貞調査の際の行為に,事実上,2条の目的が認定できる例が多いといえるにしても,ストーカー行為に該当するか否かは,ストーカー規制法違反の罪の他の成立要件によって絞りをかけられているのであるから,不貞調査目的の行為であるか否か,その目的の範囲内の行為であるか否かを,殊更に考慮する必要はないといえる。不貞調査の目的の有無や,その範囲内の行為とみるか否かを検討し,その結果が2条の目的の存否を当然に左右するかのような理解は誤りであり,行為態様等から2条の目的が否定される場合や,その他のストーカー規制法所定のいずれかの要件を欠く場合には,ストーカー規制法違反の罪に該当しないとすれば足りる。このことは,対象者が,行為者に対して不貞行為を理由に損害賠償義務を負う立場であるか否かによって変わるものではなく,行為者が,対象者に対して,ストーカー規制法に該当する態様で,不貞行為の調査をしたり,不貞関係解消を働きかけたり,慰謝料請求をしたりする行動に出た場合,行為者は,正当行為として違法性が阻却されるような特殊な事情がある場合は格別,ストーカー規制法による処罰を免れないというべきである。不貞調査として目的の範囲内の行為については,恋愛や怨恨の感情を伴っていても,2条の目的は認められないとする原判決の判断は,是認できない。」
「そこで,更に検討するに,前記認定事実からすると,被告人は,Aの交際相手の存在を疑い,その事実を確認しようとし,AとBの交際を知った後は,その交際の解消を求めたり,Bに対する慰謝料請求を行ったりする目的があったことは認められるが,それらの目的と,2条の目的とは両立し得る。そして,別居中の妻やその交際相手に対してであっても,事実1及び3にあるような,およそ対象者の自動車に勝手にGPS機器を取り付けて,その情報を得ることは,その両者の交際に関する事項とは無関係な情報も含めて,無差別かつ網羅的な対象者の行動把握であり,その行為態様からして,もっぱら不貞調査,不貞関係の解消要求又は慰謝料請求の目的にとどまる行為であることが明らかともいえないから,当然に2条の目的が否定されるべきものではない(なお,違法性が阻却されるような正当行為であるということもできない)。ストーカー規制法所定の2条の目的の行為といえるかは,当該行為の態様のみならず,前後の行動等の事情を考慮して判断するのが相当である。事実2,4及び11にあるような,対象者の住居等の付近にビデオカメラを設置して,その行動を把握することも同様である。」
「本件においては,前記認定事実にある一連の事実経過からすると,被告人は,A及びBに対し,上記のGPS機器の取付け回収や,ビデオカメラの設置・録画を通じて得た情報を用いて,同人らがそれぞれ使用している自動車に貼り紙をしたり,Aにメールを送信したりして,単に不貞関係の解消を求めるのではなく,そのために必要とはいえないAの通勤距離や(事実5),Bの勤務先,同人が利用するダイビングショップを知っていること(事実6),貼り紙を剥がす動画を見たこと(事実7),A方に赴き,軽貨物車の動きを見たこと(事実9)など,監視していると思わせるような事項を告げたり,Bが使用する自動車に貼り紙をして,義務のないことを要求したりする行為(事実10)に及んでいる。」
「こうした本件の事実関係のもとでは,一連の行為である上記の事実1ないし4,8及び11についても,2条の目的があると推認することができる。そして,後述するとおり,それらの行為は,ストーカー規制法2条1項1号の「見張り」行為に該当するし,行為の性質上,身体の安全,住居等の平穏若しくは名誉が害され,又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法(ストーカー規制法2条2項,以下,「不安方法」という。)によるものであることも優に認定できる。」
「原判決が,事実1ないし4,8及び11について,有罪認定しなかった点は,不貞調査目的があり,その目的の範囲内の行為については,2条の目的があってもストーカー規制法の適用がないという法令の解釈をしたものか,あるいは,恋愛や怨恨の感情を伴っていても,それは2条の目的とは異質のものであるという事実認定をしたものか,必ずしも明確ではないが,2条の目的が認められないとした原判決の判断は,少なくとも事実を誤認しており,それが判決に影響を及ぼすことが明らかである。検察官の論旨には理由がある。」

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