タンク内での毒ガス(硫化水素)発生と労災

交通事故

1 タンク内での毒ガス発生と労災

タンク内で作業している労働者が毒ガスで死傷するという事故はそれなりの頻度で発生する労災事故です。

例えば、温泉タンクの清掃作業中に労働者が硫化水素により死亡した事故について、長崎地裁平成28年12月20日判決は以下のとおり述べます。

「温泉タンク内から硫黄臭ないし腐卵様臭がすること,すなわち硫化水素が発生していることは周知の事実といえ,実際に,本件旅館の設備である温泉タンク内においても,清掃作業時には100ないし数百ppmという高濃度の硫化水素が発生していたのであるから,そして,硫化水素は毒作用を有するもので生命の危険も生じるものであるから,使用者である被告や,その安全管理者であるCには,従業員,とりわけ温泉タンクの維持管理業務に従事する営繕課の従業員に対し,日頃から,硫化水素の特性(有毒性や危険性)を正しく認識理解できるような安全衛生教育を行い,作業時の手順や安全上の注意を明確に定めたり指示したりしておく義務や,温泉タンク付近の見えやすい場所に関係者以外立入禁止の表示を設置すると共に,硫化水素の有毒性・危険性等について十分な知識を有している関係従業員以外の者は立ち入ってはならない趣旨であることを正しく認識理解させ,これを周知徹底しておく義務があったというべきである。また,平成25年6月11日に本件タンク内の清掃作業を行うに際しても,硫化水素の有毒性・危険性や本件タンク内に入ることの危険性を正しく認識理解させた上,その作業手順や注意事項を具体的に指示すると共に,本件タンク内に入るのは禁止であることを明確に指示しておく義務があったというべきである。」

 

このように、毒ガス発生の危険性を認識しうる状況において、事業者としては、労働者にその危険性を認識させ、作業手順や注意事項、タンク内に入ることは禁止であることを具体的に指示する義務があるとしています。

硫化水素に限らず、毒ガスが発生する現場では、同様の義務が認められるといえるでしょう。

なお、同事案では、事業者には義務違反があったとされ、死亡についての損害賠償責任もみとめられています。

他方、労働者も、硫化水素発生の危険性を認識することができた、そうはいっても労働者は業務としてタンクに入った、事業主は一回も安全対策の教育をしていなかったという事情もあるとして、1割の過失相殺がなされているところです。

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