遺言における遺言能力と口授がないことで遺言の効力が否定された事例

さいとうゆたか弁護士

すべての遺言について遺言能力が有効要件とされています。

また、公正証書遺言、死亡危急時遺言については口授も要件とされています。

東京高裁平成30年7月18日判決は、危急時遺言について、遺言能力及び口授がないとして効力を否定しています。

危急時遺言以外の遺言についても参考になる判断と思われますので、ご紹介いたします。

1 遺言能力について

同判決は、被相続人は、当時、意識清明から程遠い状態にあったとしました。

具体的には、遺言当日にJCS(Japan Coma Scale、意識障害の深度分類)で遺言者はJCS3(覚醒しているが、自分の名前・生年月日が言えない状態)だったとしました。

そのため、遺言当時に意識障害があり、遺言能力がない状態だったと判断をしています。

他方、この遺言の立会人となった医師の診断書には、「正常な判断能力を有していたと認める」と記載されていました。

この点、判決は、同医師が循環器内科の医師であって意思能力の有無の鑑別についての専門医ではないこと、同医師は意識が回復していたと説明しているもののそれを裏付ける証拠がない

こと、意識があったことを裏付ける具体的エピソードが同医師の説明にはないこと、同医師は傾眠傾向から覚醒状態に戻ったことを意識が回復したと説明しているに過ぎないと考えられるこ

とをとらえ、同医師の説明を採用することはできないとしました。

専門医ではない医師の説明の信用性を否定したこと、JCSを根拠に遺言能力を否定したことにおいて、同判決は同種事案の解決にあたり参考になるものと思います。

2 口授の要件について

同判決は、口授について、「遺言者自身が遺言の内容を具体的に確定できる程度にその趣旨を具体的に自らの声で証人に対して述べなければならないのが原則」だとしました。

その上で、当該事案においては、この要件を満たさないとしました。

その上で同判決は、「遺言者の希望する具体的な遺言内容が適切な方法で遺言の直前の時期に遺言者から直接確認され、その確認された内容の文書が作成されている場合において、証人が

その文書の内容を読み上げ、遺言者がこれを肯定する発言をしたときには、具体的な遺言の内容を自らの声で述べていなくても、例外的に口授の要件を満たすと解しても差し支えない」との

基準を示しました。

しかし、当該事案ではこの要件も満たさないとしました。

口授の有効要件について参考になる判断かと思います。

遺言書や相続、遺産分割でお悩みの方は、弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください。

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