相続法改正その4 預貯金の払い戻しの簡素化

さいとうゆたか弁護士

預貯金を持っていた人が亡くなり、遺産分割がされる場合、相続人は法定相続分に応じて預貯金債権について権利を有することになります。

しかし、現実には、金融機関は、遺産分割の合意が成立したり、全相続人の同意書がないと払い戻しに応じないことが多いです。

そこで、相続法改正において、遺産に属する預貯金債権のうち、相続開始のときの債権額の3分の1に法定相続分をかけた額については、他の共同相続人の同意がなくとも単独で払い戻しができることになりました。ただし、各金融機関毎に150万円の払い戻しの限度がもうけられています。言い換えれば、同じ金融機関に複数の口座があっても、150万円が限度となります。複数の金融機関に口座がある場合、各金融機関毎に150万円が上限となります。

この払い戻し制度により葬儀費用などの拠出が容易になります。

しかし、被相続人の借金の返済資金の調達など、より高額な金額をおろす必要がある場合もありえます。

そのような場合には、保全処分を使うことができます。

これは、家庭裁判所に申立てをして、遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部を分割してもらう制度です。

家事事件手続法200条3項に規定があります。

条文は、「前項に規定するもののほか、家庭裁判所は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を当該申立てをした者又は相手方が行使する必要があると認めるときは、その申立てにより、遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部をその者に仮に取得させることができる。ただし、他の相続人の利益を害するときは、この限りでない」というものです。

ですから、この精度により分割が認められるためには、

ⅰ 遺産の分割の審判又は調停の申立てがあったこと

ⅱ 相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により預貯金債権をおろす必要があること

ⅲ 他の相続人の利益を害しないこと

という要件が必要となります。

ⅲについては、払い戻しを認めると、他の相続人が相続分相当の遺産を取得できないような場合に他の相続人の利益を害するとされる可能性があります。

同制度の利用については弁護士に依頼した方がよいでしょう。

なお、これらの制度の施行日は2019年7月1日となります。

 

相続や遺産分割でお悩みの方は弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください。

 

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