必要以上の治療があったとしつつ、治療費全額の賠償を認めた事例(交通事故)

交通事故

交通事故で傷害を負った場合、交通事故と因果関係がある限度で治療費が賠償の対象となりえます。

よって、不必要な治療については賠償の対象となりません。

しかし、横浜地裁平成5年8月26日判決は、大部分の治療が客観的には不必要であったとしつつ、治療費全額の賠償を認めています。

同判決は、まず、被害者は2~3週間の治療で治癒する程度の頚椎捻挫にり患していたとします(この判断自体、不当かと思いますが)。

その上で、以下のとおり述べます。

「本件事故を起因とする原告の治療費は原告主張の三一七万八九七〇円を下らないところ、その大部分を占める△△整形外科における診療は、期間的・内容的に、必ずしも真摯な医療行為ばかりではなかったとの疑いを払拭することはできず、この点からすると、右治療費の全部を本件事故と相当因果関係のある損害として被告の負担とすることには些か躊躇を覚えないではない。しかし、原告がその客観的原因はともかく、本件事故を契機とする各種の自覚症状のゆえに通院を続けたことは事実というべきであり、この点について原告に詐病による利得を図る意図があったなどとは到底考えることができないから、少なくとも右治療費を本件事故による損害として請求し得ることの可否を論ずる場面においては、右の継続的通院をもって原告を責めるのは酷である。また、A医師においても、なお自覚症状が続いているとして原告から治療を求められた以上、それに対応した何らかの診療行為を行ったのもやむを得ない面がないではなく、あえて不必要な治療に及んだとまでみることもできにくい。一方、いわゆる一括支払の合意のもとに毎月「自賠責診療報酬明細書」を送付されながら、事実上中途で支払を止めただけで、その後の診療に何らの異議も伝えなかった保険会社はその本来あるべき責務を十分に果たしたとはいい難い。被告主張のように△△整形外科における治療が必要性・合理性の範囲を超えた期間に及んでいると考えるのであれば、直ちにその旨を伝えるなどして爾後の治療費の支払を拒むことを明らかにすべきであった。
以上のような事情を総合すると、原告主張の治療費については、損害の公平な分担についての信義則上、その全額である三一七万八九七〇円を本件事故と相当因果関係があるものとして被告の負担とするのが相当である。」

つまり、詐病ではなく、医師も患者の訴えに応じて治療をし、保険会社も治療自体に異議を伝えなかったという状況においては、客観的に必要な治療期間経過後の治療についても賠償の対象となるとしているのです。

患者の訴えなどの治療経過も踏まえ治療費が賠償の対象となるかどうか認定されるとの判断自体は是認すべきですし、他の事件でも参照にされるものだと考えます。

 

交通事故でお悩みの方は、弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください。

 

 

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