歯科技工士の過労死について歯科医院側に賠償責任が認められた事例

福岡地裁平成31年4月16日判決は、歯科技工士が過労自殺した事案について歯科医院の賠償責任を認めています。

義務違反の判断について参考になると思われますので、ご紹介します。

同事案では、歯科技工士は、おおむね月145時間を超える時間外労働をしていました。

裁判所は、それを前提に、以下のとおり、歯科医院側に安全配慮義務違反を認めています。

「被告は,従業員の労働時間を客観的資料に基づいて把握しておらず,労働時間に関する聞き取りなど,労働時間を把握するための措置も特段講じていなかったのであるから,被告による労

働管理は不十分であるというほかない。

被告は,平成25年頃,亡Dに対し,残業をした場合には,帰宅する際にGに連絡するよう指示したものの,同年8月までの間に,亡Dから,Gに対し連絡があったのは数回程度であり,

同年9月以降,亡Dから連絡がなかったにもかかわらず,特段亡Dの労働時間を把握する措置を講じていなかったのであるから,これをもって,被告が,労働時間を把握するための措置を講

じていたとはいえない。
以上によれば,被告は,亡Dの労働時間を適正に管理する義務を怠っていたというべきである。
そして,長時間労働や過重な労働により,疲労やストレス等が過度に蓄積し,労働者が心身の健康を損ない,ときには自殺を招来する危険があること
は,周知の事実である。
そうすると,被告は,亡Dの労働時間を適正に管理しない結果,同人が長時間労働に従事して死亡に至ることを予見することが可能であったというべ きである。」

裁判所は、以上のとおり、労働時間について適切に管理をしなかったことで安全配慮義務違反となると判断しているものです。

労働時間を適切に管理しなければ、労働時間を減少させる対策をすることもできませんし、労働時間の適切把握が長時間労働防止のための根本的な対策となります。

ですから、労働時間を適切に把握しなかったことを安全配慮義務違反ととらえる同判決の判断は極めて妥当というべきです。

なお、被告側は、歯科技工士が心療内科を受診していなかったこと、転職をしなかったことを歯科技工士側の過失として主張しています。

しかし、裁判所は、歯科技工士において自身の変調に気づいていなかった可能性があるなどとして、過失相殺の主張をすべて退けています。

穏当な判断というべきでしょう。

過労死、過労自殺、労災でお悩みの方は弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください。

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