接骨院、整骨院での施術費と損害(交通事故)

交通事故

1 接骨院、整骨院での施術費と損害(交通事故)

交通事故による症状緩和のため、接骨院が整骨院に通院することが多く行われています。

しかし、これらの費用は、必ずしも損害賠償の対象とならないことがあることに注意が必要です。

一般的には、効果が認められる場合、医師の指示がある場合などには損害賠償が認められやすいといわれています。

例えば、大阪地裁平成30年12月18日判決は、以下のとおり述べ、整骨院での施術費について賠償を認めています。

「本件整骨院については,医師の指示があるわけではなく,また,前記争いのない事実等(4)イの施術の頻度も,やや頻回である。また,本件事故発生の月が平成28年8月であるところ,各月の実通院日数と施術日数を併せた日数は,同年11月に最も多くなっており,通院と施術の頻度が,本件事故から時間が経過しても,減少していない。
もっとも,施術部位等も,本件原告病院の診断した傷病名(前記争いのない事実等(4)ア)と合致しており,本件原告病院に通院している期間中に施術を受けていることからすれば,本件整骨院の施術の有効性は否定されないから,本件整骨院の費用全額について相当因果関係を認める。」

ここでは医師の指示は問題とされていませんし、施術が有効であったことの根拠も示されていません。

施術部位が傷病名と整合している、医療機関への通院期間中に施術を受けているなどの事実だけで施術費用を賠償の対象としています。

他方、大阪地裁平成30年12月11日判決は、以下のとおり述べ、整骨院での施術について賠償を認めませんでした。

「原告は,本件事故により頸部,腰部及び右足を負傷したことが認められるが,本件事故当日には痛み等はなく,本件事故の3日後である平成28年4月25日に通院したAクリニックでは,レントゲン検査でいずれの部位にも異常が認められず,医師による特段の検査所見等もなく,何らの治療も湿布等の投薬すら行われなかったことからすると,原告が本件事故により負った傷害の程度は軽微と考えられる。そして,原告は,同日以降,病院等に通院することなく日常生活を送り,B整骨院に通院を開始したのは,本件事故から約1か月が経過した同年5月18日であるが,同日までの間に原告が通院をしなかった合理的理由は見当たらない。その後,原告は,B整骨院に高頻度で通院しているが,その間,同年10月14日にAクリニックにて初診時とめ症状の比較を求めた以外には,医師の診察を全く受けていないため,B整骨院における施術は医師の指示等によるものではないし,その施術の効果についても客観的に判断することができない。以上によれば,B整骨院における施術が本件事故により原告が負った症状に対する治療として必要かつ相当であるとは認め難く,本件事故との相当因果関係を有するとは認められない。」

単純ではありませんが、やはり医師の指示がないこと、施術効果が裏付けられないことが主な理由となっています。

このように接骨院、整骨院での施術費については必ずしも賠償の対象となるわけではありません。

どうしても受けたい場合には、医師の指示を得られるよう働きかける、指示が得られない場合には自己負担となることも覚悟の上で受診するということになりそうです。

2 接骨院、整骨院での施術費の一部否認

なお、仮に医師の指示が認められ、接骨院、整骨院での施術について損害賠償が認められるとしても、医師が施術状況を充分に把握していない場合には、施術費の一部のみ賠償の対象となることもありえます。

この点、東京地裁平成28年8月31日判決は、

・被害者が,当初から整骨院の通院について医師の同意ないし指示を受けていたものではないこと

・被害者は医療機関にあまり通院せず、よって医師が整骨院での施術について十分に把握していたとはいえないこと

を踏まえ、「同整骨院における施術の相当性については,その通院状況及び施術内容等に照らし,なお検討を要するというべきである。」としました。

その上で、

・被害者の通院頻度が、平成25年中は週に6日前後,平成26年1月から4月までは週に5日前後,同年5月及び6月は週に4日前後といった頻繁なものであること

・加害者車両の追突時の速度が低速であったことからすれば,被害者の身体に加わった衝撃の程度が重大であったということはできないこと

から、被害者については,多くとも週に2ないし3日の頻度での整骨院の通院が相当であったというべきであり,事故との相当因果関係を有するのは,実際の通院頻度のおよそ2分の1である69日分の通院と認めるのが相当であるとしました。

また、施術内容についても、実際に施術していなかった施術についてまで施術した扱いとなっているとして、事故と相当因果関係を有するのは,被害者主張の施術内容のうち6割と認めるのが相当であるとしました。

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