兄弟不分離(親権、離婚)

1 親権者が兄弟で分離された事例

離婚時において未成年子がいる場合、親権者を決める必要があります。

一般的には兄弟不分離の原則により、どちらかの親がすべての未成年子の親権者となることが多いです。

しかし、状況に応じて、兄弟の親権者を分離させることもあります。

 

2 兄弟分離を認めた裁判例(福岡家裁決定)

例えば、福岡家裁平成28年3月18日決定は、以下のとおり述べて、兄弟の親権者を別々に定めています。

長女の親権者について「原告が,原告の母に監護を委ねたことはやむを得ない面があり,長女の福祉に反する結果が生じていないこと,②前記(1)イ認定・判断のとおり,原告が親権者として不適格であるとまではいえないこと,③前記ア認定・判断のとおりの長女の意向を併せて考慮すれば,長女の親権者を原告と定め,引き続き長女の監護養育を原告にゆだねることが,長女の福祉にかなうというべきであるから,長女の親権者を原告と指定するのが相当である。」としています。

つまり、父の母が長女を監護していること、長女の意向を考慮し、長女の親権者を父と指定すべきとしました。

他方、長男の親権者については、「被告は,従前から,長男の主たる監護者であり,別居後も,長男の監護養育を行っていること,②前記認定事実(17)のとおり,長男は,被告の監護の下,心身共に順調に成長していることがうかがわれ,被告による現在の監護養育状況に特段の問題がないことが認められる。以上を総合的に考慮すれば,長男の親権者を被告と定め,引き続き長男の監護養育を被告にゆだねることが,長男の福祉にかなうというべきであるから,長男の親権者を被告と指定するのが相当である。」としました。

つまり、母において長男を監護し、順調に成長していることから、長男の親権者を母と指定すべきとしました。

以上の結果、兄弟が分離されることについては、「このような事態は,必ずしも好ましいとはいえないものの,非親権者と長女及び長男との面会交流の機会等に,長女及び長男が相互に交流する機会を設けることによって,きょうだいの交流を図ることが可能であること等に照らせば,やむを得ないというべきである。」としています。

 

3 兄弟分離を認めた裁判例(東京高裁決定)

東京高裁令和2年2月18日決定も兄弟分離を認めています(子の監護者指定など事件)。。

これは、別居後、二女、三女を母、長女を父が監護している事例についてのものです。

同居中、母が主たる監護者でした。

長女(11歳)は、自発的に父宅に行き、2年弱そこで生活しています。長女は主たる監護者の異性関係に不満を持ち、主たる監護者と暮らすことを拒否しています。父は家を不在にすることがありますが、父の父母が監護補助をしており、監護態勢に問題はないとされています。

以上の事実関係を前提に、東京高裁は、長女の監護者を父、二女・三女の監護者を母と定めています。

高裁は、「一般的に、低年齢の姉妹を同一の監護者の下で養育した方が望ましいとは言い得るものの、これは監護者を定める上での一考慮要素にすぎないものであって、父母のいずれを監護者と定めるのが子の福祉に合致するのかについては、個々の未成年者ごとに個別具体的に検討すべき事柄である」と述べて、兄弟不分離の原則を過度に重視すべきではないとしています。

なお、高裁は、父母の居宅が近く、兄弟の交流が困難ではないため、「監護親が異なることによる弊害が大きいとはいえない」としています。

4 兄弟分離が認められる場合

以上より、兄弟不分離の原則の例外が認められる場合としては、

ⅰ 兄弟が相当期間、別々に監護されており、しかもそれぞれの監護が適切である

ⅱ 兄弟交流の機会が確保されている

ⅲ 兄弟分離が子の意思に反していない

という要件が満たされる場合と言えるでしょう。

ⅰ、ⅱ、ⅲのどれかが欠けると兄弟分離できないということではなく、例えば分離の期間がかなり長期間に及ぶ場合にはⅱやⅲが欠けていても兄弟分離が認められることはありうると考えられます。

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