長時間労働によるうつ病発症と使用者の安全配慮義務(臨床検査技師の労災を巡る裁判例を素材に)

長時間労働によりうつ病を発症し、自殺などした場合、労災決定が出されることになります。

さらに、使用者に損害賠償請求をする場合には、使用者に安全配慮義務違反が存在する必要があります。

この安全配慮義務違反については、使用者側に疾病などについての予見可能性の存在が必要となります。

そのため、長時間労働により労働者がうつ病などり患した場合、使用者側が、「うつ病にり患していることは認識できなかった」などと弁解をし、安全配慮義務違反の存在を争うことが多くあります。

しかし、実際、多くの裁判例においては、長時間労働の認識があれば予見可能性を認めており、使用者側にうつ病のり患についての認識がないからといって安全配慮義務違反を否定することは多くはありません。

例えば、札幌高裁平成25年11月21日判決は、以下のように述べます。

「長時間にわたり業務に従事する状況が継続するなどして疲労や心理的負荷等が過度に蓄積すると,労働者の心身の健康を損なう危険性のあることは周知の事実であり,うつ病等の精神障害を発症した者に自殺念慮が出現して自殺に至ることは社会通念に照らして異常な出来事とはいえないから,長時間労働等によって労働者が精神障害を発症し自殺に至った場合において,使用者が,長時間労働等の実態を認識し,又は認識し得る限り,使用者の予見可能性に欠けるところはないというべきであって,予見可能性の対象として,うつ病等の精神障害を発症していたことの具体的認識等を要するものではないと解するのが相当である。」
「被控訴人病院においては,争いのない事実等(2)イのとおり,職員の出退勤時刻を管理するためにタイムカードによる打刻が用いられていた。被控訴人に代わってAに対し業務上の指揮監督を行う権限を有するCは,臨床検査技師であるから超音波検査の習得が困難であることは把握していたし,前記1(4)ウのとおり,本件自殺の1か月前(9月18日から10月17日までの期間),おおむねAとほぼ同時に退勤していた。このような事情からすると,被控訴人は,Aが時間外労働,時間外労働と同視されるべき本件自習をしていたことや,超音波検査についての習得状況などを認識し,あるいは容易に認識し得たと認められる。」
「これらの事実を踏まえると,被控訴人には,Aが過重な心理的負荷を蓄積することがないように,時間外労働,時間外労働と同視されるべき本件自習時間を削減したり,超音波検査による心理的負荷を軽減するための適切な措置を講じるべき注意義務があったというべきである。」

このように、長時間労働によるうつ病り患及びその後の自殺などの事案については、労働時間の立証及びそれを使用者が容易に認識しえたことが安全配慮義務違反を認めさせるためのキーとなるのです。

 

労災や過労死でお悩みの方は、弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください。

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