「ひととき融資」の法的問題

さいとうゆたか弁護士

大阪府千早赤坂村職員が、「ひととき融資」をして逮捕されました。

この「ひととき融資」とは、肉体関係を前提とした貸金契約のことと言います。

無許可で貸金業を営めば貸金業法違反となります。

また、高金利での融資は出資法違反となります。

その他、この「ひととき融資」については、上記法律に違反していることを度外視しても、民事的な法的効力の点でも疑問があります。

それは、売春を助長する貸金契約であり、公序良俗に反すると考えられるからです。

例えば、東京地裁平成17年11月30日判決は、ソープランドでの雇用を前提とした前貸しとしての貸金契約について、以下のとおり述べて、売春を助長するものであり、公序良俗に反し無効だとしました。

「いうまでもなく,売春は,人としての尊厳を害し,性道徳に反し,社会の善良風俗をみだすものであるから,売春を助長することになるような金員の前貸しは,売春防止法9条において刑罰をもって禁止されているところである。
 本件消費貸借契約は,前記のとおり,ソープ嬢としての雇用に当たっての前貸しとして締結されたものであり,その返済は,被告らが原告の管理下においてソープ嬢として売春を継続して行うことによってされることが予定されていたものであるから,そのような趣旨,目的のもとに,売春によって得た収入をもって返済がされることを前提として締結された本件消費貸借契約は,売春の助長につながり,公序良俗に違反するといわなければならない。」

また、妾契約を前提とする貸金契約を公序良俗違反とし、裁判上その返還請求をなしえないとしたものに、東京高裁昭和55年6月26日判決があります。

同判決は、「これらの契約は、妾関係という公序良俗に反する身分関係を作出し、維持、継続するための妾契約と不可分一体のものとして、いずれも公序良俗に反し無効といわざるを得ないから、不法の原因に基づく給付として民法七〇八条本文によりその返還を請求することは許されないのである。」としているところです。

「ひととき融資」については、まさに売春を目的とした契約ということができ、より強い意味で公序良俗に反するといえます。

よって、このような貸金契約でお金を借りた人は、仮にその金利が高いものではなかったとしても、契約は無効であり、お金を返す必要はないと考えられます。

「ひととき融資」や借金でお悩みの方は、弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください。

 
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