外国にいる外国人妻に対して支払うべき婚姻費用額

離婚問題

現在、婚姻費用は、裁判所の作成した婚姻費用算定表により計算されるのが一般です。

しかし、例えば、配偶者の一方が外国で居住する外国人であるような場合、物価水準との関係で婚姻費用算定表をそのまま使うことができるかどうか問題となります。

これは、婚姻費用算定表が、家族1人あたりの生活費を積算するなどして算定されるものであることから生ずる問題です。

この点、東京高裁平成30年4月19日決定は、日本に住む日本人夫が、中国に住む中国人妻に支払うべき婚姻費用額について判断を示しています。

まず、同決定は、以下のように述べます。

「婚姻費用が現在の権利者世帯の生活を保持するためのものであることに照らせば、権利者世帯が現実に必要としている費用を算定するのが本来であり、権利者が他国に居住し、その物価水準がわが国のそれと比較して格段に異なる場合には、婚姻費用の算定にあたり、そのような彼我の相違を反映させるのが相当である」

つまり、婚姻費用を請求する側が外国にいる場合、その国の物価水準を考慮すべきということです。

次に、具体的な算定方法については、以下のとおり述べます。

「いわゆる標準算定方式(判例タイムズ1111号参照)の考え方に基づき、抗告人、相手方及び長女が同居しているものと仮定し、双方の基礎収入の合計額を世帯収入とみなし、その世帯収入を相手方及び長女の生活費の指数と抗告人の生活費指数とで按分し、相手方及び長女に割り当てられる婚姻費用から、相手方の基礎収入を控除して、抗告人が相手方に支払うべき婚姻費用の額を定めることとする」

「なお、前記の説示に基づき、抗告人の生活費指数を100、相手方の生活費指数を70(100×0・7)、長女の生活費指数を38・5(55×0・7)とする」

つまり、中国での生活費支出が日本での7割程度であることを前提に計算するとされています。

なお、裁判所に提出された資料からは、中国の物価水準は日本の半分ないしそれ以下とうかがわれます。

しかし、裁判所は、それらの資料の正確性を検証することが困難であるとして、中国での物価は日本の70パーセントという数字を導き出しており、生活費指数もそれにしたがって7割としたものです。

婚姻費用を請求する側が住んでいる国の物価水準を考慮しないと、婚姻費用を払う側よりも高い生活水準を享受できることにもなりかねないので、物価による調整は必要と思われます。

婚姻費用を請求する側が外国人かどうか問わず、このような調整がなされる可能性があることに常に留意する必要があるでしょう。

 

離婚でお悩みの方は、弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください。

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