同居の審判

離婚問題

夫婦は法律上は同居義務を負っています。

よって、一方が家を出て行った場合には、同居義務を根拠に同居を求める審判を申し立てることが考えられます。

少数ながら同居を認める審判例もあります。

しかし、裁判所は、概して同居審判には慎重なようにみえます。

例えば、福岡高裁平成29年7月14日決定は、家裁が条件付で同居を命ずる審判を言い渡したのに対し、それを覆し、同居を命じないこととしました。

同決定は以下のとおり述べます。

「本件において,もともと抗告人が相手方との別居を開始したのは,相手方の両親との不和に原因があったものと思われるが,その後,相手方との話合いが繰り返される中で,その内容が,相手方実家での同居,別の場所での同居,離婚といった経緯をたどるうち,上記離婚訴訟の判決に至るまでの間に,抗告人の相手方に対する不信感,嫌悪感が強まっていき,前記のとおり,現時点で,抗告人は,適応障害の症状を呈しており,そのストレッサーとされるのが相手方であることは明らかである。」
「また,相手方が作成している書面の内容からは,相手方において,面会交流のあり方を含めた長女との交流について強いこだわりを有していること,それが,長女を監護している抗告人との同居を求める大きな動機になっている様子はうかがわれるものの,抗告人自身の体調などに対する労りといった心情などはうかがわれず,相手方が,抗告人から嫌悪されていることを自覚している様子がうかがわれる。」
「かかる事情を踏まえると,抗告人について,あらかじめ薬を服用することで適応障害の症状を抑えることができる可能性はあるとしても,そのようにしてまで相手方との同居生活を再開したところで,抗告人において,早晩,服薬によって症状を抑えることも困難となり,再度別居せざるを得なくなる可能性は高いということができ,上記相手方の作成した書面の内容や,これまで当事者双方が互いに批判的で疑心暗鬼の状態にあることに照らすと,そのような事態に至った時に,相手方から抗告人に対し,適切な配慮がされるとは思われず,相互に個人の尊厳を損なうような状態に至る可能性は高いといわざるを得ない。」

 

このように、同居を命じたところで相互に個人の尊厳を害する状態に至る可能性が高いとして同居を命じないこととしました。

夫婦が別居する場合には、同居を続けると多少なりとも相手の尊厳を害する状態となるような場合が多いでしょうから(だから別居をすることが多い)、福岡高裁決定の判断を踏まえると、同居が命じられる場合は多くはなさそうです。

また、審判が確定したところで、強制執行はできないと考えられますので、実効性はありません。

そうであれば、別居を解消する手段としては、円満調停で夫婦関係を再構築するというのが遠回りのようでいて、現実的な手段のように思います。

 

離婚などでお悩みの方は弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください。

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