勤務実態を把握する義務を怠ったということで過労死について安全配慮義務違反が認められた事例(労働災害)

過労死を防止する第一歩は、労働時間などの労働実態を把握することです。

これがなされないと対策のうちようがありません。

神戸地裁平成25年6月12日判決は、そのような労働実態把握の必要性を直視し、以下のとおり、比較的具体的に使用者としてどのようにして労働実態を把握すべきか示しています。

「平成17年ないし平成18年当時,Dの労働時間は長時間に及んでいたところ,Dの直属の上司であったKは,前記2(1)キ(ア)のとおり,Dの時間管理表(申請書)(乙3の1~12)の記載が実態と異なることを認識し,また,Dが長時間の所定外労働を行っていると聞いていた(乙20・1枚目,証人K・同尋問調書24頁)というのであり,さらに,認定事実によれば,平成17年10月末ころには,Dの様子がおかしいことをOから聞いていたというのであるから,Dや検査プロジェクト室の他の従業員から勤務実態について聴き取りを行う,Dが送信したメールの送信時刻を確認する,Dのパソコンのログ記録を確認するなどの方法によって,Dの勤務実態を把握し,前記2(1)のとおり長時間にわたっていたDの労働時間を短縮するための措置を講ずべき義務があったというべきである。」
「平成17年ないし平成18年当時,Dは,大きな心理的負荷を伴う検査員確保業務や中期計画等策定業務に従事していたところ,Kには,Dの検査員確保等に関するメールが適宜届いていたこと(甲28・18頁,22頁,甲29・3頁,13頁,16頁,21頁,24頁等),検査プロジェクト会議の席上で検査員の調整がなされることもあったこと(乙33・8頁),Dから協力会社への検査員確保の要請を求められることもあったこと(認定事実)から,Dらからの聴き取り等によってDの検査員確保業務の実態を把握し,その負担を適切に調整すべき義務があったというべきであり,中期計画等の策定についても,当初のDの方針と異なる方針に基づく策定を指示した(認定事実)のであるから,Dからの聴き取り等によってその進捗状況を把握し,適切な助言をすべき義務があったというべきである。」
このように、裁判所は、使用者には、メールの送信時間やパソコンのログ記録を確認するなどして過重労働について確認すべき義務があったとしました。

その上で、同判決は、以下のとおり述べ、かかる義務は果たされていないとしました。

「しかるに,Kは,Dの勤務実態や業務の詳細について把握する措置を取ることなく,漫然と「早く帰れよ。」「土日は休みなさい。」などと言うのみで,検査員確保業務について積極的に助言をしたり負荷軽減措置を取ったりすることはなく,中期計画等の策定についても,Dに進捗状況を問いかけることをせず,本件自殺の後に初めて中期計画が策定されていないことを知ったというのであり(乙20・1~2枚目,乙21・2枚目,乙33・7頁,証人K・同尋問調書1頁,7~8頁,25~27頁,29頁,45頁),OからDの様子がおかしいと聞いた際にも,Dに対し「大丈夫か。」と声をかけたのみで,それ以上の対応をしなかった(認定事実)というのであるから,前記各義務を果たしていたとは認められない。」

早く帰るように指示していたという主張は過労死の事件で使用者側からよく出されるものですが、大量の仕事をかかえている労働者にそのようなことを言っても気休めにもなりません。

きちんと労働実態を把握し、負担を軽減する措置をとらない限り安全配慮義務を尽くしたことにはなりません。

同判決は、過労死裁判において使用者が果たすべき義務について明確に示しており、今後他の裁判所においても参考にすべきものと考えます。

 

過労死や労働災害でお悩みの方は、弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください。

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