葬儀費用の損害賠償(交通事故)

さいとうゆたか弁護士

1 交通事故における葬儀費用額

交通事故で被害者が亡くなられた場合、葬儀費用が賠償の対象となります。

ここでいう葬儀費用には、香典返しの費用は入りません(他方、香典は損益相殺の対象となりません)。

葬儀費用として認められる賠償額は一般的には150万円が目安とされます。

たとえば、大阪地裁令和4年4月15日判決は、「葬儀費用(既払掛金を含む。)として150万円を超える支出を要したことが認められるけれども、葬儀費用のうち150万円を、本件不法行為と相当因果関係のある損害と認める。」として葬儀費用額が150万円を超える場合でも賠償額は150万円にとどまるとしています。

しかし、150万円それ以上の賠償が認められることもあります。

被害者の年齢と葬儀費用の損害賠償

例えば、東京地裁平成20年8月26日判決は、以下のとおり述べ、葬儀費用250万円の賠償を認めました。

原告X1が葬儀関係費として181万2240円を負担したことは,当事者間に争いがなく,証拠(甲24の2の1ないし8,24の3の1ないし3,24の4ないし7,24の8の1ないし3,24の9,24の10の1ないし40,24の11の1ないし10,33の2ないし12及び14ないし19,36)によれば,原告X1は,Aの葬儀等につき総額250万円を超える支出をし,また,原告X2及び原告X3も,Aの葬儀等につき40万円を超える支出をするとともに,墓地及び墓石の購入等につき400万円を超える支出をしたことが認められるところ,既に認定したAの身上や本件事故の態様等に照らし,Aの親族において墓地及び墓石の購入を含めたAの葬送等に関して十分に手厚く対応しようとしたことには無理からぬところがあることを考慮すると,賠償の対象として認められる範囲としては,250万円をもって相当というべきであり

なお、同判決については、

・被害者が34歳であったこと

・被告がオートマチック車運転中にアクセルペダルを踏んだままギアを入れ替える操作をしたため被告車を急発進させて被害者に衝突させたもので,加害者の一方的な過失により発生したものである

との事情がありました。

以上によると、被害者が若年であったこと、加害者に一方的過失があったことが葬儀費用が高額になった根拠とされているようです。

大津地裁令和3年11月11日判決も、「葬儀費用として242万7948円を支出していること(ただし,うち60万6528円は当日返戻品代であり,香典を損益相殺しないことから,損害には含まれない。)及び亡Bの死がいわゆる子が親に先立つ逆縁であったこと等から,180万円が本件事故との間に相当因果関係のある損害と認められる。」としており、被害者の年齢を理由に150万円超の葬儀費用を認めていると考えられます。

被害者の社会的地位と葬儀費用の損害賠償

被害者の社会的地位も賠償額に影響します。

さいたま地裁平成24年1月31日判決は、以下のとおり述べた上で、葬儀費用250万円の支払いを命じています。

亡Aは春の交通安全運動に際し交通安全協会役員として街頭指導活動に従事中に本件事故に遭ったものであり,そのためさいたま県警察は亡Aを警察協力殉職者として取り扱っていること,そのため原告X1としては亡Aについて恥ずかしからぬ葬儀を営む必要があったと推認されること,現実にも原告X1は亡Aの葬儀のために500万円を超える費用を支出していること,以上の事実が認められるから,亡Aの葬儀費用について,原告X1の損害として250万円を認めるのが相当である。

同判決は、被害者の社会的地位などを踏まえ葬儀費用250万円を認定しているようです。

業務・公務遂行中の事故と葬儀費用賠償

松山地裁令和3年6月4日判決は、以下のとおり、被害者の死亡が公務災害であることを理由に、180万円の賠償を認めています。

原告X1は,Aが死亡したことにより葬儀費用として212万0035円を負担したと認められる(甲10)。このうち半額近くが粗供養に関する費用となっているが,Aの勤務先や本件が公務中の事故であったことなどに照らすと,多くの者が弔問に訪れたと推認されるのであって,これらの事情も踏まえると,本件においては,180万円の限度で本件事故と相当因果関係がある損害と認められる。

その他、死亡場所と居住場所が離れていて2回葬儀を行う必要があった場合などに高額な葬儀費用が認められる傾向にあるようです。

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