土砂崩落による事故と安全配慮義務違反(労災)

交通事故

1 土砂崩落による事故と労災

東京地裁平成25年2月22日判決は、試掘作業中に土砂崩落が発生したために死亡した労働者の遺族から使用者に対する損害賠償請求を認めました。

土砂崩落による事故における安全配慮義務を考える上で参考になるものと思われますのでご紹介します。

同判決は、安全配慮義務違反について以下のような判断を示しています。

「本件事故の前日には台風の接近により大雨が降り,朝方まで雨が残っている状況であり,関係者が本件試掘調査を行えるかどうかを危ぶんでいたこと,本件試掘作業中2本目のトレンチが一部崩壊し,Bらでこれを修復したことに加え,乙14によれば,重機のオペレータであるLは,本件事故当日の地面は砂利に水がしたたっている状況であり,深く掘削すると崩れるおそれがあるのではないかと不安に思ったことが認められる。」
「以上によれば,本件事故は,本件土地の地盤が大雨により軟弱となっていたのに,掘削により土砂崩落に配慮することなくトレンチ掘削をしたために,トレンチ側壁の土砂が崩落し,生起したものであることが認められる。」
「前記(1)に説示のとおり,被告は,本件試掘調査については,少なくとも重機使用者や重機の使用によって危険が及び得る者の生命身体の保護のため安全に配慮すべき義務を負っていたというべきであるところ,本件試掘調査に立ち会った被告のK及びGは,本件事故の前日には台風の接近により大雨が降り,朝方まで雨が残っている状況であって,本件土地が軟弱になっており,本件土地においてトレンチを掘削すれば,壁面が崩落し,トレンチ内部で作業中の者の生命身体に危険が及ぶ可能性があったにもかかわらず,前記1(2)ア及びイに認定のとおり,本件試掘調査の実施に反対することなく掘削を開始させ,また,同調査の半ばで本件土地から離れて漫然と掘削作業を続行させ,そのために2本目のトレンチの壁面の一部が崩れるという本件事故の予兆も見逃し,掘削作業を中止することができなかったものであり,その結果Bは崩落した土砂に埋まり,死に至ったものであるから,被告にはBに対する安全配慮義務違反があったというべきである。」

 

このように、大雨により土砂崩落が懸念されうる状況があったのに、漫然と掘削作業をさせたことについて安全配慮義務違反を認めています。

使用者としては、天候その他土砂の崩落につながりかねない事情に留意し、労働者の安全確保を最優先に、危険であると判断される場合には掘削などの作業を回避すべき義務があるということになります。

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