スマートフォンでのながら運転についての長岡支部判決

さいとうゆたか弁護士

新潟地裁長岡支部は、2019年8月8日、スマートフォンでのながら運転をして追突事故を起こし、被害者を死亡させた事件について、被告人に懲役3年の実刑判決を言い渡しました。

スマートフォンでのながら運転で実刑判決は類例がないようです。

例えば、宇都宮地裁平成22年7月12日判決は以下のとおり述べ、自動車運転中に携帯電話を拾おうとしたため、自動車を歩行者に衝突させ、死亡させたという事件について、懲役3年ながら5年間の執行猶予判決を言い渡しました。

「本件は,被告人が,普通乗用自動車を時速約50キロメートルで走行中,助手席床に落ちた携帯電話を取ることに気を取られ,前方注視を怠った過失により,道路左前方を同方向に歩行中の被害者に気付かないまま同人に自車を衝突させて死亡するに至らせ,さらに事故の報告義務に違反した事案である。」
「被告人は,交通閑散に気を許し,自動車を走行させながら助手席の床に落ちた携帯電話を拾おうとし,前方注視という運転者としての基本的な注意義務を怠ったもので,危険な運転態様であり,その過失は重大である。本件事故により被害者は26歳の若さでその尊い生命を失ったもので,被害者の無念さ,被害者をここまで育てた遺族の悲しみの深さは察するに余りがあり,生じた結果は誠に重大である。遺族の処罰感情が厳しいのも当然のこととして理解できる。また,被告人は,本件事故によりフロントガラスの左側が割れるなど自車に相当の損壊が生じたにもかかわらず,事故の原因を十分に確かめることなく現場を離れており,報告義務違反の点も,自動車運転者としての自覚に欠けた無責任な犯行というほかない。」
「以上からすると,被告人の刑事責任は軽視できない。」
「しかし一方,判示事実については素直にこれを認めて反省の態度を示していること,被告人運転車両は,任意保険に加入しており,保険会社を通じ,遺族との間で示談交渉がなされていること,遺族に対し,夫が2度謝罪し,自らは謝罪の手紙を出し,今後直接謝罪すべく見舞金を準備するなど,誠意をもって対応しようとする姿勢を示していること,養育を必要とする4人の子どもがおり,特に次男は自閉症と言語発達遅延により支援が必要な状況にあること,これまで前科のないことなど,被告人のために斟酌できる事情も認められる。」
「これらの事情を総合考慮し,本件については,被告人に社会内における更生の機会を与えた上,遺族に対し誠意を示す努力を続けさせるのを相当と認め,被告人を主文の刑に処した上,その刑の執行を猶予することとしたものである。」

懲役3年執行猶予5年というのは執行猶予としてはギリギリに近いところ、つまり実刑との境目のようなところにあります。

そして、宇都宮地裁判決は、スマホを落としたのを拾おうとしたという事案であること(長岡支部判決の事案はマンガをみて長時間前を見ていなかったというもの)、時速50キロメートルで走行していたときの事故であるということ(長岡支部判決の事案は時速100キロメートル)から、長岡支部判決の事案より悪質性が低いとも思われます。

ですから、今回の長岡支部判決が特別重いという評価はできないだろうと思います。

これまでの裁判例を踏まえると、スマホを見ながらのながら運転で死亡という結果が生じた場合、今後も実刑判決が出ることが想定されます。

しかし、それも検察官の適切な訴訟追行があることが前提です。

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