医師に対する配転命令の効力(労働事件)

さいとうゆたか弁護士

一般に、使用者の労働者に対する配転命令については広い裁量が認められており、職種や地域についての限定合意がある場合は別として、配転命令の効力が否定されることは中々ありません。

この点、広島高裁岡山支部平成31年1月10日決定は、外科医について、外科医として勤務するという職種の限定合意があり、配転命令の効力は認められないとしました。

同判決は、以下のとおり述べます。

「一般に、専門医認定や指導医認定、技術認定を受けるまでには相当な時間を要するため、医師が自ら専門分野を変えることは現実的に困難であることが認められる」

「抗告人は、平成4年4月から平成29年4月までの25年間にもわたり、外科医師として勤務してきており、外科専門医等の多数の認定医・指導医の資格を有していること、相手方病院でも一貫して消化器外科、肝胆膵外科の専門医として勤務しており、専門医としての資格、経験及び実績を積み重ねてきたことが認められる」

「抗告人が有する認定医等の資格の更新には、いずれも更新前の一定期間に、指定された内容及び件数の手術に関与していること等が必要であり、外科医師として臨床に従事することが必須であるものと認められる」

「このように、抗告人の従事する外科医師という職業は、極めて専門的で高度の技能・技術・資格を要するものであること、長年にわたり特定の職務に従事することが必要で、熟練度や経験が労務遂行上重要な意味を持つものであることが明らかである」

「これらのことからすると、抗告人にとって、その技能・技術・資格を維持するために、外科医師としての臨床に従事すること必要不可欠であり、その意に反して外科医師としての臨床に従事しないという労務の形態は、およそ想定することができないものである相手方においても、抗告人の外科医師としての極めて専門的で高度の技能・技術・資格を踏まえて雇用したことは明らかであり、抗告人の意に反して外科医師として就労させない勤務の形態を予定して、抗告人を雇用したとは認められない」

以上のとおり、判決は、外科医師が極めて高度の専門的知識や経験を必要とする職種であること、日々外科手術に従事する必要性が高度であることを基礎として、医師の雇用について外科医師として職種限定の上なされたものとしました。

その上で、外科手術をしない役職への配転の効力を否定しました。

同判決の判断は、外科医師以外でも、高度な専門的知識や経験を必要とし、日々の当該業務への従事が重要な職種についても妥当すると考えられます。

労働事件でお悩みの方は、弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください。

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