医学的には就労できるものの、会社の判断で就業できなかった場合の休業損害(交通事故)

交通事故

1 傷害を理由に会社から就業を拒否された場合の休業損害

交通事故で傷害を負い、その症状のために就労できなかった場合、休業損害が発生することがあります。

他方、実際に仕事を休んだとしても、症状からして就労可能だった場合、休業損害が発生しないのが原則となります。

しかし、大阪高裁平成15年11月19日判決は、医学的には就業可能となった後においても、会社都合で出勤できなかった場合について、休業損害を認めています。

同判決は以下のとおり述べます。

控訴人が後遺症診断を受けた平成13年8月20日までの労働能力喪失率について検討するに,被控訴人は,平成13年4月以降は休業の必要性及び相当性が認められないとして,同時期以後の休業損害の発生を否認している。この点,原審における証人A(書面尋問)は,控訴人は,平成13年3月30日以降は,車の運転並びにタクシー乗車業務ができない状態にはなかったと述べており,乙8(意見書)にも,(就労開始は)業務として運転する場合には,術後3か月頃が適当との記載があり,これらによれば,被控訴人の上記指摘には理由があるかのようにも見える。しかしながら,他方,控訴人は,平成13年4月中旬頃,当時の勤務先会社に,タクシー乗車業務に復帰することを申し出たが,勤務先から中途半端は状態で復帰しないよう申し渡されて復職を断念した経過があると認められ,乗客の安全確保を最優先にすべきタクシー会社であってみれば,上記のような対応は,会社にとっても,控訴人にとっても,やむを得ないところであると考えられる。そして,平成13年4月は未だ抜釘前の状態であり,痛みも残存していたという先に認定した事実を併せ考えると,控訴人は,平成13年8月20日に後遺症診断を受けるまでは,就業することができなかったものであり,この間の労働能力喪失率は100パーセントであったと認めるのが相当である。

このように、会社が休業を命じたことに合理性がある場合、医学的には就労可能であっても休業損害の請求が可能ということになります。

大阪地裁令和3年11月26日判決も、以下のとおり述べ、局部的症状しかなく、医師からの休業指示がなかったという事例において、会社判断を理由に、休業損害を認めています。

原告は,平成26年8月1日にB病院を退院した後,約1年5か月に亘って休業したものであるが,退院時には基本動作が自立して筋力も相当に改善していたものと認められ(一覧表番号1),その後の症状は,頚部痛,両上肢のしびれや筋力の低下という局部的症状であって,医師により休業が指示されていたなどの事情も窺われない」
「もっとも,原告の職種はフォークリフトのオペレーターであったところ(前提事実3),具体的な業務としてはフォークリフトの運転のほか,倉庫内における家電製品等の運搬であったというのであり(原告本人2頁),両上肢のしびれや筋力低下といった上記症状は,それらの業務に支障を生じさせるものということができる。そして,本件の証拠上,復職時点における正確な症状の程度は明らかではないが,原告は,復職後,従前の業務に復帰したのではなく事務作業に従事していたというのであり(原告本人9頁。なお,復職後の原告の給与は本給こそ事故前と大差がないものの付加給が大幅に減少していて(甲7,乙30),実際に業務の変更があったものと考えられる。),勤務先からも従前の業務に従事させるには耐えないと判断されていたと捉えることができ,従前の業務に復帰できない状態において復職しないことが不相当であるとまでいうことはできない。

会社が休業を命じたことが合理性がある場合、休業が事故と相当因果関係あるものと見られるということでしょう。

なお、会社が休業を命じたことに合理性がない場合、交通事故の加害者に対する賠償請求はできないものの、会社に対する給料請求ができる可能性が残ると考えられます。

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