特有財産と財産分与(離婚)

離婚問題

1 特有財産と財産分与(離婚)

離婚の際には、夫婦が共同で作った財産について財産分与がなされることになります。

夫婦の一方が結婚前から持っていた財産、すなわち特有財産については、夫婦が共同でつくったものではないので、財産分与の対象とならないのが原則です。

夫婦の財産は共有財産であると推定されます。

よって、特有財産を主張する側で、当該財産が特有財産であることを立証できなければ当該財産は特有財産とされることになります。

例えば、福岡家庭裁判所平成30年3月9日決定は、

相手方は,内縁関係の開始時に相手方が保有していた預貯金口座の残高の合計額である4733万4354円(乙91)を控除すべきであるとも主張している。
しかしながら,そもそも,申立人と相手方の内縁関係は約18年半もの長期間に及んでいる上に,関係証拠に照らすと,相手方は,同期間中に,上記預貯金口座以外にも複数の預貯金口座を保有していたことが認められる。そして,各預貯金口座の出入金履歴には,生活費関係の多数の出入金のほかに,事業関係資金等と推察される多数かつ多額の出入金及び資金移動も混在していることが認められる。
上記事情等に照らすと,内縁関係の開始時に相手方が保有していた預貯金口座の残高について,特有性が維持されているとは認められないから,相手方の主張は採用できない。

として、一方当事者に、婚姻時に相当な財産があったとしても、婚姻期間が長期間に及び、お金の出入りが頻繁であったとして、婚姻時の預貯金残高は特有財産とはならないとしました。

ただし、同決定は、婚姻時において相当な財産があったことも踏まえ、3分の1:3分の2という分与割合で分与をしています。

2 特有財産について分与を認めた事例

しかし、極めて少数ですが、特有財産についても財産分与を認める裁判例が複数あります。

例えば、東京地裁平成15年9月26日判決は、以下のとおり述べ、特有財産についての財産分与を認めています。

「被告は,A1社,I1社を初めとする多くの会社の代表者であって,社団法人,財団法人等の多くの理事等を占める,成功した経営者,財界人である原告の,公私に渡る交際を昭和58年頃から平成9年頃までの約15年に亘り妻として支え,また,精神的に原告を支えたことからすると,間接的には,共有財産の形成や特有財産の維持に寄与したことは否定できない。」
「なお,この点に関し,原告は,被告が原告の交際を助けた点については,直接利益に繋がるものではなく,経営者,財界人としての社会的責務を果たしたボランティア的なものに過ぎず,原告の財産形成に対しての寄与はまったくなく,むしろ経済的には損失である旨主張する。」
「しかし,その社会的責務は,成功者である経営者,財界人としての原告の地位に当然伴うものであること,それを果たさないことは,成功者である経営者,財界人としての原告の地位を脆弱とする危険性も否定できないこと,原告が,被告が社会的責務を果たすことを要請し,具体的な指示もしていることからすると,その社会的責務を共に果たした被告は,間接的には,原告の財産維持,形成に寄与していると解される。」
「しかし,他方,前記認定のとおり共有財産の原資はほとんどが原告の特有財産であったこと,その運用,管理に携わったのも原告であること,被告が,具体的に,共有財産の取得に寄与したり,A1社の経営に直接的,具体的に寄与し,特有財産の維持に協力した場面を認めるに足りる証拠はないことからすると,被告が原告の共有財産の形成や特有財産の維持に寄与した割合は必ずしも高いと言い難い。」
「そうすると,原被告の婚姻が破綻したのは,主として原告の責任によるものであること,被告の経歴からして,職業に携わることは期待できず,今後の扶養的な要素も加味すべきことを考慮にいれると,財産分与額は,共有物財産の価格合計約220億円の5%である10億円を相当と認める。」

このように、特有財産の維持について貢献してきたといえること、婚姻関係破綻の責任、離婚後の妻に収入が期待できないことなどを考慮し、特有財産についての財産分与を認めました。

その他、財産の大きさも考慮されたのではないかと考えられます。

このように場合によっては特有財産についても財産分与が認められる可能性があるので、簡単に諦めないことが大事です。

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