同性愛と不貞慰謝料

さいとうゆたか弁護士

1 同性愛者と不貞行為の有無

不貞は、典型的には、性行為を意味します。

よって、同性愛者同士の場合、不貞はなりたたないようにも思われます。

同性間の性的行為により不貞が認められるかどうかについては、東京地裁令和3年2月16日判決が、女性同士の性的行為について、「不貞行為とは、端的には配偶者以外の者と性的関係を結ぶことであるが、これに限らず、婚姻共同生活の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する蓋然性のある行為と解するのが相当であり、必ずしも、性行為(陰茎の挿入行為)の存在が不可欠であるとは解されず、夫婦共同生活を破壊し得るような性行為類似行為が存在すれば、これに該当する」として、不貞に該当しうることを認めています。

横浜地裁小田原支部令和4年4月26日判決も、夫のいる妻と女性との性交類似行為について、「Aと原告がいまだ婚姻関係にあったにもかかわらず、被告がAとの間で性交類似行為を行ったことは、原告とA間の婚姻共同生活の平穏を侵害するもので、不法行為に当たるというべきである」と述べ、不貞行為に該当するとしています。

2 不貞があった場合に同性愛者同士のカップルが内縁として保護されるか

宇都宮地裁真岡支部令和1年9月18日判決は、同性愛者同士のカップル(双方女性。パートナーA、パートナーB)について、Aが男性と不貞をしたことについて、BからAと不貞相手に対する慰謝料請求を認めました。同判決は確定しています。

同性のカップルについても内縁の場合と同じような法的保護が受けられるか

まず、同判決は、「法律上同性婚を認めるか否かは別論、同性のカップルであっても、その実態を見て内縁関係と同視できる生活関係にあると認められるものについては、それぞれに内縁関係に準じた法的保護に値する利益が認められ、不法行為法への保護を受けうると解するのが相当である」として、同性のカップル間であっても内縁と同視できるようなものについては内縁に準じた法的保護が与えられるものとしました。

同性のカップルを内縁と同視できるか

次に、同判決は、当該事案のカップルについて、約7年間の同棲生活、同性婚が法律上認められている米国ニューヨーク州で婚姻登録証明書を取得したこと、日本国内で結婚式・披露宴もしていること、2人が住むためのマンションの購入も進められていたこと、第三者からの精子提供も受けていたことから、2人は内縁関係と同視できる法律関係にあったとしました。

かなり内縁関係に類似する実態があったケースであることが分かります。

その上でBからA及び不貞相手に対する慰藉料請求を認容しています。

3 同性愛者間の不貞の慰謝料

東京地裁令和3年2月16日判決は、慰謝料10万円のみを認めています。その理由として、同性間の性行為を行ったものであることを指摘しています。

宇都宮地裁真岡支部令和1年9月18日判決は、慰謝料100万円を認めています。その理由として、同性婚が法律上承認されていないことを指摘しています。

横浜地裁小田原支部令和4年4月26日判決は、8ケ月程度の不貞により離婚に至ったケースについて、慰謝料を120万円としています。同判決は、「夫婦の一方が第三者と性的行為を持つことにより夫婦のもう一方が被る精神的苦痛は、行為の相手方の性別に左右されるものではない」としつつ、「性的行為の態様」を慰謝料決定の要因としています。実質的には女性同士の性的類似行為であることから一定の慰謝料減額をしたものと考えられます。

以上のとおり、同性愛をめぐる慰謝料は低廉となる実態がありますが、これが妥当かどうかについては疑問がありえます。

4 新潟で不倫、LGBT(LGBTQ)に関わるご相談は弁護士齋藤裕へ

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