時間外労働の少ない教員の過労自殺について公務災害(労災)と認められた事例

労災や公務災害の認定実務においては、時間外労働の時間数が大きな要素として考慮され、時間外労働の時間数が大きくない場合は中々労災や公務災害とは認められません。

しかし、静岡地裁平成23年12月15日判決は、過労自殺した教員について、以下のとおり述べて、時間外労働の時間数が大きくない場合についても公務災害として認定しています。

同判決は、まず、「Aがうつ病を発症した平成16年5月18日前後までに従事した勤務日数は,同年4月に21日,同年5月に9日の合計30日(うち授業を担当した日は27日)程度であり,時間外勤務についても,前記認定のとおり,Aが毎日おおよそ午後6時ないし7時ころには帰宅していたことからすれば,同人の時間外勤務時間数は,多くとも平成16年4月に約21時間,同年5月に約22時間程度にとどまるものと推認されるのであるから,同人の勤務日数・勤務時間による心理的負荷が特別過重であったとは認められない。」として、当該教員の労働時間が特別長いものではなかったことを確認します。

その上で、同判決は、以下のとおり述べ、当該教員の担当クラスで児童の問題行動が頻発し、それが新任の教員にとっては強度な心理的負荷をあたえるものであったとして、最終的に自殺を公務災害として認めました。

「Aは,平成16年4月から4年2組を担当し始めたが,同クラスには,Aが同クラスを担当した当初から,話を聞くことができない児童や,他の児童を叩く等の問題行動のある児童が児童Nを含め複数名存在していたところ,同月下旬ころになると,児童NがAの指導に従わないほか,Aの気付かないところで様々ないじめが行われたり,授業がうまく機能しないといった事態が次々に生じていたことが認められ,かかる状況は,クラスが編成されて1か月以上が経過した5月以降においても落ち着きをみせず,むしろ恒常化していたものと認められる。このように,Aが担当した4年2組では,指導に困難を要する複数の児童らの問題が当初から顕在化し,数々の問題行動が発生していたというべきである。」
「また,その程度においても,当該児童をAが注意して収まるといったものではなく,ときには児童を身体的に制圧したり,保護者からの要請・苦情への対処をしたりする程に重大なものであったことが認められる。」
「これらは,個々の問題ごとにみれば,教師としてクラス担任になれば多くの教師が経験するものであったとしても,Aの場合は,着任してわずか1か月半程度の期間に,数々の問題が解決する間もなく立て続けに生じた点に特徴があるのであり,かかる状況は改善される兆しもなかったことからすれば,新規採用教員であったAにとり,上記公務は,緊張感,不安感,挫折感等を継続して強いられる,客観的にみて強度な心理的負荷を与えるものであったと理解するのが相当である。」

このように、不慣れな労働者が、公務上・業務上困難な状況に対応せざるを得ない状況においては、それがうつ病などに結びついた場合、労災あるいは公務災害の認定がされる可能性がありますので、公務上・業務上困難な状況にあったことについての丁寧な主張・立証が重要となります。

 

労災、労働災害、過労死、過労自殺でお悩みの方は弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください。

 

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