「桜を見る会」前夜祭と公職選挙法

さいとうゆたか弁護士

現在、「桜を見る」会に政権中枢の政治家や与党政治家の後援会メンバーが招かれていたことが批判されています。

同時に、安倍首相が後援会関係者850名を招いて前夜祭を行った、5000円の会費で前夜祭が行われたが到底5000円でおさまらないような料理が出されたとの指摘もあります。

仮に、5000円と実際の会費との差額を安倍首相あるいは後援会が負担したとすると、いずれにしても政治家の振る舞いとしては疑問符がつくだろうと思われます。

しかし、法的に見ると、差額を安倍首相が負担したか、後援会が負担したかによって随分と違いがあります。

 公職選挙法199条の2は以下のとおり定めます。

「公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。以下この条において「公職の候補者等」という。)は、当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行われる区域。以下この条において同じ。)内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、寄附をしてはならない。」

つまり、衆議院議員でもある総理大臣としては原則寄付が禁止されます。

会費と食事代の差額を補填することも寄付に該当するので、仮に安倍首相が差額を負担していたのであれば公職選挙法違反となります。

しかし、後援会が支出した場合については、かなり扱いが異なります。

公職選挙法199の5は以下のとおり定めます。

「政党その他の団体又はその支部で、特定の公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)の政治上の主義若しくは施策を支持し、又は特定の公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)を推薦し、若しくは支持することがその政治活動のうち主たるものであるもの(以下「後援団体」という。)は、当該選挙区(選挙区がないときは、選挙の行われる区域)内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、寄附をしてはならない。ただし、政党その他の政治団体若しくはその支部又は当該公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)に対し寄附をする場合及び当該後援団体がその団体の設立目的により行う行事又は事業に関し寄附(花輪、供花、香典、祝儀その他これらに類するものとしてされるもの及び第四項各号の区分による当該選挙ごとの一定期間内にされるものを除く。)をする場合は、この限りでない。」

つまり、後援会の設立目的(会員の親睦など)に沿った行事への支出は許されることになります。

ですから、安倍首相の後援会において差額を補填していたとすると公職選挙法違反で問うことは難しいことになります。

後援会が有権者でもある会員の旅費や食事代の差額を補填するという扱いは与野党問わず蔓延しています。

今回の問題を期に公職選挙法199条の5の改正も検討されるべきです。

なお、「桜を見る会」自体については法的責任追及が困難という見解も出されています。

しかし、安倍総理の判断で出席者が決まっていているような場合、枡の交付などを伴う「桜を見る会」に参加させることが寄付に該当する余地は十分あるものと考えます(政治資金規正法4条3項では、「この法律において「寄附」とは、金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付で、党費又は会費その他債務の履行としてされるもの以外のものをいう。」とされており、誰の財産を寄付するのかは問われていません)。

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