過労による脳梗塞発症の事件における労働時間の認定(労災)

さいとうゆたか弁護士

1 過労死事件における労働時間の認定

過労をめぐる裁判においては労働時間の認定が肝となります。

その際、業務日誌などがあれば有力な認定資料となりますが、その信用性が争われることもありえます。

自動車販売会社において従業員が長時間労働のために脳梗塞を発症したという事案について、福岡地裁平成30年11月30日判決は、以下のとおり述べて、業務日誌の信用性を認め、それをもとに長時間労働を認定し、最終的には安全配慮義務違反を認め、会社及びその代表取締役に損害賠償を命じています。

この日誌は被災者の元同僚が作成したものです。

会社はこの日誌は事後的に作成されたものであるなどとして争っていました。

「P1の日誌は、本件労災申請に係る資料として、平成20年10月分から平成21年7月分までのものが提出されており、本件訴訟における証拠としても、これらの日誌が提出されているところ、P1は、上記期間においてこれらの日誌を使用していたものといえるから、これらの日誌が、事後的に統一性のある書き込みをすることができる状態で残存していたものとは考えがたい。また、上記のP1の日誌のうち平成20年10月分から平成21年1月分までのものは、旧版日誌であるところ・・・日誌の改定後は、旧版日誌は被告会社に残存していなかったものと認められるから、P1が、事後的に新しい旧版日誌を入手して、それに上記期間の業務等を書込んだものとも考えがたい」

「以上に加え、提出されているP1の日誌の分量及びほぼその全ての日について業務内容等の記載があることに照らすと、P1の日誌における各日の予定や結果の記載は、それぞれ対応する日又はその前後の日に記入されたものと認められるというべきである」

このように、日誌に毎日業務内容等についての記載がなされていることから、改変が困難(毎日の記録を後から捏造するのは手間がかかるし、矛盾が出てきやすいので)なものとして、日誌の信憑性が認められたものです。

その他、日誌の信憑性は、客観的な記録や他の記録との整合性などの要素により裏付けられます。

当該事案では、被災者以外の者が作成したという要素も意味を持ったのではないかと考えられます。

長時間労働の事案では、日誌のような重要証拠を確保できるか、そのために社内に協力者を確保できるかが重要ということになります。

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