会社役員と休業損害(交通事故)

交通事故

交通事故で会社勤めの人がケガをし、やむをえず欠勤した場合、基本的には減収分が休業損害として賠償の対象となります。

しかし、会社役員が受け取っている役員報酬については、その一部が労務の対価ではなく、実質的には配当などの意味を持つことがあります。

そのため、必ずしも役員報酬全額について休業損害が認められるわけではありません。

しかし、1人会社であること、役員が業務を全部やっていたなどの事情があれば、役員報酬全額分について休業損害として認められることもあります。

例えば、東京地裁平成28年11月17日判決は、以下のとおり述べ、役員報酬360万円のところ、ほぼそれに匹敵する345万9400円を休業損害の対象として考慮すべきとしました。

「原告は,Eから役員報酬として360万円(月額30万円)の支払を受けていたのであり,その基礎収入は同額とすべきである旨の主張をする。」
「しかしながら,証拠(甲87,90,乙1,2,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,① Eは,原告らの自宅を本店所在地とする一人会社であり,代表取締役であるAが,印刷機器の販売等を行っていたこと,これに対し,原告は,家事労働に従事しつつ,その経理事務等を手伝っていたにすぎないこと,② 監査役であるGは,本件事故当時,Eの経理事務等を手伝い,月額8万円の支払を受けていたことが認められ,かかる事実に照らすと,原告の役員報酬のうち労務提供の対価に相当する部分(原告の基礎収入)は345万9400円(平成22年賃金センサス女性学歴計全年齢平均賃金)とするのが相当である。」

ここでは、1人会社であることなどを踏まえ、賃金センサスを基準として休業損害額が定められています。

千葉地裁平成6年2月22日判決は、以下のとおり述べ、役員において肉体労働に従事することが多かったことなどから、役員報酬全額を休業損害の基礎となるものとしました。

「反訴原告X1が建物解体工事・建材卸業等を主たる営業目的とする反訴原告会社の代表取締役であることは、当事者間に争いがなく、乙第一五、第一六号証、第一八、第一九号証及び反訴原告X1本人尋問の結果によれば、反訴原告会社は、平成二年二月二六日の臨時社員総会で、同年一月以降の反訴原告X1の役員報酬を月額金一〇〇万円とすることを議決し、反訴原告X1は、役員報酬として、同年一月から同年五月までに合計金五〇〇万円の支給を受けたが、本件事故後、職務を遂行することができなかったため、同年六月から同年一一月までの六か月分合計金六〇〇万円の支給を受けなかったこと、反訴原告会社は反訴原告X1の個人会社であり、同反訴原告の職務内容も、受注の際の見積りのほか、ダンプ・重機の運転及び土砂・廃材等の積み降ろし等の肉体労働が多く、右役員報酬はその全額が労務提供の対価と見るべきであり、税務上も給与所得として取り扱われていることが認められる。そうすると、本件事故と相当因果関係のある反訴原告X1の休業損害は、同年六月から同年八月までの三か月分の右役員報酬合計金三〇〇万円であると認めるべきである。」

このように、会社役員の交通事故については、会社や勤務の実態などにより休業損害額がかわってくることがあります。

それらの適切な主張立証が重要となります。

 

交通事故でお悩みの方は、弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください。

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