「M/村西とおる狂熱の日々 完全版」とプライバシー

さいとうゆたか弁護士

1 「M/熱狂の日々 完全版」とプライバシー

報道によると、「全裸監督」で話題となった村西とおる監督を描いたドキュメンタリー映画「M/狂熱の日々 完全版」で、過去の裸の映像が勝手に使われたと訴えた女性の要求に従い映像

が一部削除されたとのことです。

裸の映像であっても、一旦公表を前提とする撮影に承諾した以上、公表されても何も文句もいえないという考えもありえなくはありません。

しかし、裁判所は、特にアダルトビデオに関わるような場面において、撮影された人の承諾の効力を厳格に判断し、一旦撮影や公表に承諾があったとしても、承諾時に想定されなかったような場面での公表や長期間が経過したような場合には、新たに撮影された人の承諾がなければ公表を違法であると判断する傾向にあります。

 

2 アダルトビデオ画像の流用とプライバシー侵害に関わる裁判例

例えば、東京地裁平成18年7月24日判決は、以下のとおり述べて、アダルトビデオに出演することについて承諾したとしても、これをアダルトビデオ以外の媒体で公表することまでただちに許されることなく、アダルトビデオ以外の媒体で公表することについて承諾なく公表した場合にはプライバシー侵害となりうると判断をしています。

 

「性交渉は,極めて個人的な行為であり,性交渉及びこれに密接に関連する行為は,一般人の感受性を基準として当該私人の立場に立った場合に公表を欲しないものであると認められる。
そして,性交渉に関する演技は,それが演技であったとしても,自らの裸体を人目に晒して,異性と交わる際の姿態の状況を具体的に表現するものであって,私生活上の事実と受け取られるおそれのある情報をも含むものであるから,およそ時期,相手,場所を限定しないままに世間一般に公開されることは予定されておらず,一般人の感受性を基準として当該私人の立場に立った場合,一般的な公表を欲しないものであると認められる。
したがって,本件記事のうち,原告が行った性交渉の演技内容を,その際の原告の姿態等を撮影した写真3葉の掲載とともに記載した部分もまた,原告のプライバシー権を侵害するものというべきである。
これに対し,被告らは,本件記事に記載された原告の性交渉の内容は,「□□□」を撮影した際の映像を編集したものであって,単なる演技であり,プライバシー権として保護されるべき私事ではない旨主張する。
この点,確かに,原告は,販売を予定していたアダルトビデオ「□□□」の主演女優として性交渉を演じていたものであり,その販売上必要,相当な範囲で,裸体や性交渉の演技が不特定多数の者に公表されることは想定していたといえる。しかしながら,それによって,性交渉の演技についての私事性が一切失われ,当該アダルトビデオ以外の表現媒体において,これを一般的に公表することまでが直ちに許されることにはならないから(原告の承諾の範囲を検討する必要がある。),被告らの主張は採用できない。」

 

3 今回についても、アダルトビデオに出演した際の映像が一般向けの映画に流用されると出演時には想定できなかったと考えられますから、女性の要求はもっともだったと言えるでしょう。

アダルトビデオなどの映像を転用する場合には出演者からの承諾は原則として必須と考えるべきでしょう。

仮に顔をぼかしていたとしても、裸体は高度に保護されるべきプライバシー情報ですから、やはり承諾は必要だと考えます。

 

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