痰吸引の際のアセスメントが不十分であったとして病院側の賠償責任を認めた事例(医療過誤)

さいとうゆたか弁護士

東京地裁平成31年1月10日判決は、中顔面低形成に対する手術を受けた患者が、看護師から痰吸引を受けた際に容態が悪化し、遷延性意識障害となったという事案について、病院側の義務違反を求め、損害賠償を命じました。

裁判所は、まず、気管吸引のガイドラインを前提に、「本件病院の医療従事者は、気管吸引を実施しない状態であっても実施した状態であっても、患者が低酸素血症から低酸素脳症に至るリスクが相応にあることを考慮し、気道閉塞の有無を確認し、あるいは、気道閉塞に至らないようにアセスメントをすべき義務があるというべき」があるというべきとしました。

その上で、以下のとおり看護師の義務違反を認定しています。

「看護師は、再吸引を実施するにあたり、1回目の吸引に協力的であった原告が、激しく抵抗しており、かつ、酸素飽和度計が外れていてSPO2を知りえず、呼吸困難と吸引への抵抗との区別がより困難となっている状況において、同人の顔貌を観察するといったアセスメントを実施せず、また、アセスメントが十分にできないことを踏まえ、異常な事態であると判断して吸引を中止することも、応援を要請することもしなかった。したがって、看護師らは、上記義務に違反したと認められる」

このように、吸引への激しい抵抗、SPO2を計測できないことなどの事情から、患者の顔貌を確認するなどのアセスメントをすべきであったのに、これをしなかったことが義務違反に該当するとしました。

そして、「看護師が、上記の時間帯に、原告に呼吸困難等の異常が生じている可能性を予見し、吸引を直ちに中止して、顔貌や呼吸苦の確認等のアセスメントを実施する、あるいは、アセスメントが不可能であれば応援を要請するなどの行動をとっていれば、本件病院の医療水準及び医療環境を踏まえると、原告が気道閉塞を起こしていたことに気づき、あるいは、気道閉塞の可能性も念頭に置いた救命措置が可能であったものと認められる」として、看護師の過失により低酸素脳症、ひいては遷延性意識障害となったとして、遷延性意識障害になったことによる損害の賠償責任を認めました。

気道閉塞は極めて重篤な結果に結びつくものであり、それに結びつく呼吸管理上のミスについては多くの裁判例において医療機関側の過失が認められているところです。

東京地裁の判決は、どのような場合に、何に注目してアセスメントすべきかについて参考になるものと考えます。

 

医療過誤でお悩みの方は、弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください。

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