新型インフルエンザ等対策特別措置法改正について

さいとうゆたか弁護士

報道よると、政府は、新型インフルエンザ等対策特別措置法を改正し、新型コロナウイルスを対象としうるようにすることを検討しているとのことです。

しかも、12日に衆議院通過、13日にも成立ということですから、かなりの急スピードで制定しようとしています。

もとより、新型コロナウイルス対応の重要性に鑑みると、政府や自治体による対応をしやすくする立法は必要と考えられます。

そもそも、法改正しなくても対応できるのではないかという議論もありますし、相応の根拠はあると思いますが、あえて疑念を残さないために法改正すること自体を批判することは難しいと思います。

しかし、新型インフルエンザ等対策特別措置法がベースということになると、人権侵害のおそれなしとしません。

改正にあたっては、人権に配慮した対応を行われなければなりません。

特に、新型インフルエンザ等対策特別措置法45条は、特定都道府県知事において学校等施設管理者に対し利用停止等を指示等できるとしています。

条文は以下のとおりです。

「第四十五条 特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態において、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるときは、当該特定都道府県の住民に対し、新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間並びに発生の状況を考慮して当該特定都道府県知事が定める期間及び区域において、生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の新型インフルエンザ等の感染の防止に必要な協力を要請することができる。
2 特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態において、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるときは、新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間を考慮して当該特定都道府県知事が定める期間において、学校、社会福祉施設(通所又は短期間の入所により利用されるものに限る。)、興行場(興行場法(昭和二十三年法律第百三十七号)第一条第一項に規定する興行場をいう。)その他の政令で定める多数の者が利用する施設を管理する者又は当該施設を使用して催物を開催する者(次項において「施設管理者等」という。)に対し、当該施設の使用の制限若しくは停止又は催物の開催の制限若しくは停止その他政令で定める措置を講ずるよう要請することができる。
3 施設管理者等が正当な理由がないのに前項の規定による要請に応じないときは、特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため特に必要があると認めるときに限り、当該施設管理者等に対し、当該要請に係る措置を講ずべきことを指示することができる。」

 

しかし、学校等の利用停止等は、教育を受ける権利等重要な権利と抵触しかねません。現在、総理大臣の要請に基づき、全国の多くの学校が休校となり、子どもたちの教育を受ける権利が制約されています。しかも、その決定にあたり、医学的な知見が参考になされた形跡はありません。

よって、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法のもとで、同じように乱暴な措置が取られないようにするため、最低限、利用停止等の指示等をするについては医師等の専門家の意見聴取と判断プロセスについての記録保存を義務付け、不服申し立ての手続きを設けるべきです。

法改正にあたっては、上記したところも含め、全手続きにおいて、専門家の判断を尊重した手続き、事後的なチェックを可能とする判断プロセスについての記録保存、人権制約の最小化が徹底されなければなりません。

 
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