いじめによる自殺について法的責任を認めた裁判例(大津中学生いじめ自殺事件控訴審判決)

1 自殺といじめとの因果関係

従来、いじめ自殺をめぐる裁判において、いじめ自体の法的責任を認めつつ、自殺についての因果関係を認めず、いじめ自殺についての法的責任は認めないというものが多い傾向にありました。

しかし、大津中学生いじめ自殺事件をめぐる大阪高裁令和2年2月27日判決は、いじめにより自殺することは一般的知見として確立しているとして、いじめと自殺の相当因果関係を認め、自殺による損害についても法的責任を認めています。

今後のいじめをめぐる裁判に影響を及ぼす可能性があると思われるため、ご紹介します。

2 判決内容の内容

同判決は、以下のとおり述べ、自殺はいじめにより通常生ずべきとしました。

「本件各いじめ行為は、行われた期間が1ケ月程度と比較的短期間ではあるものの、亡Dを負傷させるような暴力行為や極めて陰湿・悪質な嫌がらせ行為を含むものである上、上記の間、頻回に行われたものであり、その態様、頻度等は、亡Dをして自殺者に共通の心理とされる孤立感、無価値観を抱かせるとともに、控訴人らとの関係から離脱することが容易ではないとの無力感、閉塞感を抱かせるうえで十分なほどに悪質・陰湿かつ執拗なものであったといえることに加え、その行為当時、いじめによりその被害者が自殺に至る可能性があることについて学術的にも一般的知見として確立し、いじめによる児童生徒の自殺に関連する報道等は決して珍しいものではなく、いじめによってその被害生徒が自殺することもあり得ることは社会一般に広く認知されており、行政の側でもその対策を模索し、平成25年にはいじめ防止対策推進法の成立にまで至っているという経緯をも併せ考慮すれば、本件各いじめ行為を受けた中学2年生の生徒が自殺に及ぶことは、本件各いじめ行為の当時、何ら意外なことではなく、むしろ、社会通念に照らしても、一般的にありうることというべきであり、亡Dの自殺に係る損害は、本件各いじめ行為により通常生ずべき損害に当たるものということができ、控訴人らの本件各いじめ行為と亡Dの自殺に係る損害との間には相当因果関係あるものと認められる」

ここでは、一定の悪質性をもったいじめ行為が前提とされており、すべてのいじめ行為について自殺との因果関係があるとしているわけではないと思われます。

しかし、それでも、いじめ自殺に関する知見の深まりを踏まえ、明らかにいじめ自殺について法的責任を認める際のハードルを引き下げていると思われます。

同判決は、学校側の責任を問う場合も含め、被害者がいじめ自殺の責任を問うことを容易にするという側面を持つと思います。

3 いじめの相談は新潟の弁護士齋藤裕に

新発田第一中学いじめ自殺事件についての記事もご参照ください。

いじめでお悩みの方は、弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください。

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