新型コロナと憲法改正 国会のテレビ会議について

さいとうゆたか弁護士

 本年4月3日、衆議院憲法審査会の与党筆頭理事は、野党筆頭幹事と会談し、国会議員に新型コロナウイルス感染が広がった場合に定足数を満たさない事態がありうるとの問題意識を踏まえ、議論を呼びかけました。
 憲法56条1項は、「両議院は、各々その総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない」としています。国会議員に感染が広がった場合、この定足数を満たさないことも想定できます。
 その解決として、憲法を改正し、感染症が蔓延したような場合には低い定足数で足りるとするという方法もありえます。しかし、その場合、極めて少数の議員だけで法律などが制定させられてしまうことになり、国民主権原理に基づき国民の代表が法律の制定を行うという基本構造との関係で問題があるように思われます。
 そこで、感染症が蔓延した場合において国会議員にウェブ会議による出席を認めることにより解決すべきです。
確かに、憲法56条1項が「出席」という言葉を使っていることとの関係でウェブ会議出席が許されるのか問題はあります。この点、民事裁判IT化の議論を参考にすべきです。民事裁判IT化の一環として民事裁判の口頭弁論などをウェブ会議で行うことが検討されています。憲法82条は裁判の対審は公開法廷で行うとしているため問題もありますが、民事裁判IT化の議論の中では、ウェブ会議でも、そこでのやりとりがモニターなどで法廷にいる傍聴人に認識できるようであれば公開主義に反しないとされています。同じように、国会でも、大臣らと国会議員らの発言や表情が相互に同時に認識でき、かつ、その状況がテレビやネットなどで公開されているのであれば、出席扱いしても憲法上許容しうると考えます。
 これだけ新型コロナウイルス感染者が増えてくると、国会議員などの中に感染者がおり、それが国会での審議を通じ国会議員の多くに感染するという懸念は高まっているといえます。
民事裁判IT化における議論をも踏まえ、是非速やかに法律か規則で国会でのウェブ会議について規定していただきたいと思います。
 その際、通信が遮断した場合に議員を出席扱いとするかどうかなど、技術的な不都合を踏まえた規定も備えなくてはならないでしょう。
また、あくまで憲法「改正」は平時において、慎重に審議すべきものであり、このような緊急時において、改正の必要性を吟味しないまま拙速にされるべきではないと考えます。 

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