マスクをつけないことを理由とした懲戒処分 新型コロナ法律相談 その20

さいとうゆたか弁護士

1 学校法人木村学園がマスクをつけない職員を懲戒処分にしたとの報道

読売新聞の報道によると、大阪電子専門学校を運営する学校法人木村学園が、職員がマスクをつけずに会議に出席したとして出勤停止の懲戒処分としたとのことです。

実際の経過は不詳ですが、かなり批判がなされているようです。

2 マスク不着用を理由とした懲戒処分は許されるか

そもそもマスク不着用という、職務遂行そのものに関わらない事象が懲戒処分の理由となりうるでしょうか。

企業は安全配慮義務を負っており、従業員らが新型コロナウイルスに感染しないよう配慮する義務を負っています。

ここで、安全配慮義務とは、「労働者が労務提供のために設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示にもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務」をいいます。

そうすると、マスクを着用しない従業員がいた場合、この義務に抵触するおそれがありますので、一定の指導をすること、それに反した場合に懲戒処分とすることは許容されるでしょう。

しかし、安全配慮義務は同時に設備などを整備すべきことを定めていると考えられます。

宿直中の労働者が盗賊に視察された事件に関する最高裁昭和59年4月10日事件判決では、盗賊侵入防止の物的設備を十分に施すことが安全配慮義務の内容とされています。

そこで、マスク不着用について考えると、マスクは通常の人であれば常日頃着用するというものではありませし、特に現在ではマスクの購入は極めて困難です。

このような状況において、使用者は、労働者を出勤させるのであれば、マスクを労働者に支給し、着用を指示するという義務を負うと考えられます。

仮に、マスクの支給もないまま、マスクの着用指示があったとしても、使用者として尽くすべき安全配慮義務を尽くしておらず、そのため労働者が指示に従うことができないものと思われるので、マスク不着用を理由とした懲戒処分は違法と考えます。

マスク支給が困難であれば、事業所において安全に業務を行うことができなかったということであり、休業も検討すべきだったと思います。

3 新潟の労働問題はご相談ください

労働事件でお悩みの方は、弁護士齋藤裕にお気軽にご相談ください。

懲戒処分については、経歴詐称と懲戒処分についての記事もご参照ください。

まずはお電話(025-211-4854)か、メールでご連絡ください。
弁護士費用はこちらの記事をご参照ください。

さいとうゆたか法律事務所トップはこちらです。

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です