離婚と健康保険

1 離婚と健康保険

離婚に伴い健康保険の異動を生ずる場合が多いですが、必ずしもスムースにいかない場合もあります。

以下、離婚時の健康保険の取り扱いについて解説します。

2 離婚する当事者の健康保険

以下のような流れになります。

  離婚の一方当事者が、他方当事者の会社の健康保険の被扶養者であった場合

元妻が、元夫の会社の健康保険の被扶養者であった場合を念頭に説明します。

・元妻が新たに自分の勤務先の健康保険の被保険者となる

・元妻が新たに勤務先で被保険者とならない⇒元妻は国民健康保険に加入しなければならない。元夫にその会社から資格喪失証明書を取得してもらい、居住地の役所に資格喪失証明書を提出する必要

  離婚の一方当事者が他方当事者を世帯主とする国民健康保険に加入していた場合

元妻が、元夫を世帯主とする国民健康保険に加入していた場合を念頭に説明します。

・元妻が自らの勤務先の健康保険で被保険者となる⇒役所で国民健康保険脱退の手続き+勤務先で健康保険加入の手続き依頼

・元妻が自ら世帯主として国民健康保険に加入

3 子どもの健康保険

以下のような流れになります。

  子どもが非監護親の会社の健康保険の被扶養者であった場合

母が監護親、父が非監護親、子どもが離婚前に父の会社の健康保険の被扶養者だった場合を念頭に説明します。

◎母が新たに母の勤務先の健康保険の被保険者となる

⇒《選択肢1》勤務先に申告して母の会社の健康保険の被扶養者とする

⇒《選択肢2》母の収入より父からの養育費が多いような場合、父の会社の健康保険の被扶養者でありつづけることもありうるが、あまりメリットはなさそう。

◎被扶養者だった配偶者が新たに勤務先で被保険者とならない

⇒《選択肢1》子どもが母を世帯主とする国民健康保険に加入する。保険料は母負担

《選択肢2》母の収入より父からの養育費が多いような場合、父の会社の健康保険の被扶養者でありつづけることもありうる。国民健康保険料の節減になる可能性。

      子どもが非監護親を世帯主とする国民健康保険に加入していた場合

父が非監護親、母が監護親の場合を念頭に説明します。

◎母が子を自らの勤務先の健康保険の被扶養者とする⇒役所で国民健康保険脱退の手続き+勤務先に申告して母の会社の健康保険の被扶養者とする

◎母は国民健康保険⇒子は母を世帯主として国民健康保険に加入

4 健康保険の脱退について当事者の同意が得られない場合

離婚に向けた協議や手続き中において、配偶者や子どもをどちらかの健康保険から脱退させ、他方の健康保険に入れるについては、基本的には両当事者の合意が必要です。

しかし、保険者の判断で、脱退を行う場合もあります。

当該健康保険において健康保険の被扶養者とするかどうかについては、「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」という厚生労働省保険局保険課長・厚生労働省保険局国民健康保険課長通知があります。現状、その要件に合致していないような場合、保険者に被扶養者から外すよう求めることが考えられます。

また、「被保険者等からの暴力等を受けた被扶養者の取扱い等について」という厚生労働省保険局保険課長通知は、「当該被害者から、被保険者と当該被害者が生計維持関係にないことを申し立てた申出書とともに、児童相談所及び婦人相談所、高齢者虐待に関する相談・通報窓口、障害者虐待に関する相談・通報窓口、配偶者暴力相談支援センター、自治体等の公的機関から発行された被保険者等からの暴力等を理由として保護(来所相談を含む。以下同じ。)した旨の証明書又は地方公共団体と連携して被害者への支援を行っている民間支援団体(一時保護委託を受けている民間シェルター、配偶者暴力に関する協議会参加団体、補助金等交付団体)(以下「民間支援団体」という。)から発行された確認書(以下「証明書等」という。別添1参照)を添付して、当該被害者が被扶養者から外れる旨の申出がなされた場合には、保険者において、以下に定める手続を行い当該被害者を被扶養者から外すことが可能である。」として、DV被害者である被扶養者から健康保険の被扶養者からの脱退を求めることができるとしています。

DV被害者であれば、この通知を利用し、保険者と交渉することがありえます。

なお、東京地裁令和4年12月1日判決は、保険者は一般的に被扶養者を外すことができるのであり、「被保険者等からの暴力等を受けた被扶養者の取扱い等について」の要件を満たした場合のみ外すことができるわけではないとしています。

5 注意すべき点

特に多いトラブルは、夫が資格喪失証明の手続きをしてくれないケースが散見されます。そのような事態となりそうであれば、離婚調停などできちんと取り決めておくことが重要です。

また、母の収入が低く、養育費がかなり高い場合、子どもが父の会社の健康保険の被扶養者であり続けることができる場合もあることに注意が必要です。このようなやり方ができれば、母の支払う国民健康保険料が節減できる可能性もあります。

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