美少年・佐藤龍我さんに対する芸能活動自粛の妥当性 恋愛禁止ルール違反は懲戒の根拠となるか?

さいとうゆたか弁護士

1 美少年・佐藤龍我さんに対して活動自粛

報道によると、佐藤龍我さんが、女優の鶴嶋乃愛さんと交際していることが報道されたことに関連して、ジャニーズ事務所が、新型コロナウイルスの影響により不安定な情勢の中報道がなされたことについて謝罪するとともに、佐藤さんを活動自粛とさせたということです。

新型コロナウイルスの問題は深刻です。

しかし、新型コロナウイルス対策が必要だとしても、1対1で交際をすることは新型コロナウイルス対策とは無関係であるようにも思われます。

すると、実質的には恋愛報道を理由とした処分がなされたようにも思われます。

このような私的行動を理由して活動自粛処分を下すことは許されるのでしょうか。

以下、佐藤さんがジャニーズ事務所に雇用されていたこと、活動自粛が実質的な懲戒処分であることを前提に検討します。

2 活動自粛の懲戒処分としての許容性

これまで多くの裁判例において、労働者の私生活上の行為を理由とした懲戒処分の効力が争われてきました。

そもそも労働者は使用者の家来ではありません。

ですから、私生活上の活動を理由とした懲戒処分は原則として許されないはずです。

特に、恋愛については、会社はよほどの事情がなければ介入できません。

芸能プロが恋愛をしたアイドルに対して損害賠償請求をした事案についての東京地裁平成28年1月18日判決は、以下のとおり述べ、恋愛をしたことを理由とする損害賠償は原則として認められないとしています。

「他人に対する感情は人としての本質の一つであり、恋愛感情もその重要な一つであるから、かかる感情の具体的現れとしての異性との交際、さらには当該異性と性的な関係を持つことは、自分の人生を自分らしくより豊かに生きるために大切な自己決定権そのものであるといえ、異性との合意に基づく交際(性的な関係を持つことも含む。)を妨げられることのない自由は、幸福を追求する自由の一内容をなすものと解される。とすると、少なくとも、損害賠償という制裁をもってこれを禁ずるというのは、いかにアイドルという職業上の特性を考慮したとしても、いささか行き過ぎな感は否めず、芸能プロダクションが、契約に基づき、所属アイドルが異性と性的な関係を持ったことを理由に、所属アイドルに対して損害賠償を請求することは、上記自由を著しく制約するものといえる。また、異性と性的な関係を持ったか否かは、通常他人に知られることを欲しない私生活上の秘密にあたる。そのため、原告が、被告花子に対し、被告花子が異性と性的な関係を持ったことを理由に損害賠償を請求できるのは、被告花子が原告に積極的に損害を生じさせようとの意図を持って殊更これを公にしたなど、原告に対する害意が認められる場合等に限定して解釈すべきものと考える。」

よって、佐藤さんの交際についても、それを理由に重い懲戒処分を課すことは法的に疑問があります。

芸能界においては、従来、労働者の権利が十分尊重されないきらいがあったと思います。

しかし、最低限の法的ルールに従った取り扱いがなされるべきです。

 

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