忘れられる権利

さいとうゆたか弁護士

1 最高裁の認めた忘れられる権利

ネットに前科や前歴に関わる情報が掲載された場合、半永久的に掲載され続けることになります。
犯罪等に関わる情報は公益性がありますので、ある程度の期間、ネット上に前科・前歴に関わる情報が存在することはやむをえないものと考えられています。
しかし、事件から長期間経過した場合、社会の関心も薄れ、前科・前歴に関わる情報を公表する利益は小さくなります。
他方、被疑者とされた人は前科・前歴により差別などされない利益を有すると考えられますので、事件から長期間経過後は前科・前歴情報をネットから削除してもらう権利、忘れられる権利を有することになります。
この点、最高裁平成29年決定は、上記の忘れられる権利を実質的に承認しました。
具体的には、以下のとおり述べて、検索エンジンの会社に対し、URL等の情報を検索結果から削除することを求める権利を承認しました。

「検索事業者が,ある者に関する条件による検索の求めに応じ,その者のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報を検索結果の一部として提供する行為が違法となるか否かは,当該事実の性質及び内容,当該URL等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度,その者の社会的地位や影響力,上記記事等の目的や意義,上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化,上記記事等において当該事実を記載する必要性など,当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので,その結果,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には,検索事業者に対し,当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができるものと解するのが相当である。」

ここで問題となる要素は以下のとおりです。
・削除を求められている情報の内容(悪質なものかどうか)
・削除を求められている情報が伝達される範囲
・削除を求められている情報の伝達により被疑者だった人が被る具体的不利益の程度
・削除を求めている人の社会的立場(政治家等であれば削除は認められにくい)
・削除が求められている記事の目的や意義
・削除を求められている記事の掲載時の社会状況とその変化
・削除を求められている事実を記載する必要性

これらを比較考量し、公表されない利益が公表する利益を上回る場合に削除が認められるとしました。

 

2 削除の基準

しかし、最高裁決定後も削除が認められた事例は少数にとどまります。

上記最高裁決定         約5年前の児童買春で罰金刑に処せられた事例⇒削除せず
横浜地裁平成29年9月1日判決 11年前に歯科医師法違反で罰金刑に処せられた事例⇒削除せず

東京高裁は、令和2年6月29日、2012年の建造物侵入容疑で逮捕された事件(逮捕案件)について、削除を認めませんでした。

他方、札幌地裁令和1年12月12日判決は、以下の事情があるケースについて削除を認めました。
・7年前に強姦で逮捕、嫌疑不十分で不起訴

強姦は児童買春や歯科医師法違反に比べ重罪ですし、それにも関わらず7年前の事件について削除を認めたのは有罪が確定しているかしないかの差が大きいと考えられます。
有罪が確定している場合、比較的軽微な犯罪であっても10年超URLが削除されないことがある一方、重罪であっても逮捕どまりであれば7年程度で削除されるということでしょう。
しかし、刑が執行された後まで個人名をつけて前科前歴情報をネット上公開し続ける必要性には多大な疑問があります。

今後も様々な事件について削除がなされる範囲を広げる努力が求められるでしょう。

 

3 新潟でネットでお悩みの方は弁護士齋藤裕へ

ネット上の書き込みの削除・発信者情報開示請求についての記事

SNSでのなりすましと法的責任についての記事

もご参照ください。

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