見回り隊の違法性

さいとうゆたか弁護士

1 東京アラートと見回り隊

報道によると、東京都は、新型コロナの東京アラート発動を受け、警視庁と共同で歓楽街を見回る見回り隊を結成する予定だとのことです。

この見回り隊が、警察官が歓楽街で遊んでいる人たちに質問や警告を行うようなものであるとすると、違法の問題が生じかねないと考えます。

以下、検討します。

2 交通検問をめぐる最高裁判決

最高裁昭和55年9月22日判決は、警察による交通検問の合法性が問われた事件で以下のような判断を示しています。

 

「警察法二条一項が「交通の取締」を警察の責務として定めていることに照らすと、交通の安全及び交通秩序の維持などに必要な警察の諸活動は、強制力を伴わない任意手段による限り、一般的に許容されるべきものであるが、それが国民の権利、自由の干渉にわたるおそれのある事項にかかわる場合には、任意手段によるからといつて無制限に許されるべきものでないことも同条二項及び警察官職務執行法一条などの趣旨にかんがみ明らかである。しかしながら、自動車の運転者は、公道において自動車を利用することを許されていることに伴う当然の負担として、合理的に必要な限度で行われる交通の取締に協力すべきものであること、その他現時における交通違反、交通事故の状況などをも考慮すると、警察官が、交通取締の一環として交通違反の多発する地域等の適当な場所において、交通違反の予防、検挙のための自動車検問を実施し、同所を通過する自動車に対して走行の外観上の不審な点の有無にかかわりなく短時分の停止を求めて、運転者などに対し必要な事項についての質問などをすることは、それが相手方の任意の協力を求める形で行われ、自動車の利用者の自由を不当に制約することにならない方法、態様で行われる限り、適法なものと解すべきである。原判決の是認する第一審判決の認定事実によると、本件自動車検問は、右に述べた範囲を越えない方法と態様によつて実施されており、これを適法であるとした原判断は正当である。」

最終的には任意の交通検問は適法としているのですが、その判断に至る論理は興味深いものです。

つまり、

ⅰ 警察は、任意だからといって何をしてもいいわけではなく、国民の自由への干渉にわたる行為は任意でも無制限に許されるわけではない

ⅱ 自動車の検問については、自動車の運転者が公道において自動車を利用させてもらっていることの当然の負担として一定の取り締まりに協力すべき

ⅲ 警察が交通取締の一環として交通違反の予防等のために一定レベルの自動車検問を実施することは許容される

というものです。

3 見回り隊の違法性

それでは見回り隊について検討してみましょう。

ⅰについていうと、歓楽街で遊ぶことは国民の自由ですし、現時点では法律で規制されているわけではありません。

よって、任意であっても警察が歓楽街で国民にむやみやたらに声をかけることは許されないでしょう。

そして、ⅱに関して言うと、歓楽街で遊ぶことは公道を自動車で利用することとと異なり、当然何らかの負担を負わされるようなものとは思われません。

また、交通違反は犯罪等ですが、現時点において歓楽街で遊ぶことは犯罪でもなんでもないので、ⅲの観点からしても警察が見回り、質問等することの合法性は裏付けられないと考えます。

以上より、最高裁判決は、交通検問について合法としましたが、見回り隊が質問等をする場合にはその合法化根拠がなく、場合によっては違法と評価される可能性もあると考えます。

東京都には、見回り隊ではなく、新型コロナをめぐる情勢悪化の際に補償とセットで休業を義務付けることができる条例を制定する(あるいは国に立法を求める)など、より透明な手法を検討してもらいたいと思います。

 

持続化給付金の受給権者についての記事

新型コロナで勤務日数が削られた場合についての記事

新型コロナと医療従事者の労災についての記事

正社員だけテレワークの法的問題についての記事

緊急事態宣言と面会交流についての記事

もご参照ください。

 

さいとうゆたか法律事務所トップはこちらです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です