ボーガン、ボウガンの所持はなぜ銃刀法上禁止されていないのか?

さいとうゆたか弁護士

1 兵庫県宝塚市でボーガンで母ら3人死亡との報道

報道によると、6月4日、兵庫県宝塚市でボーガンで3人が死亡した事件が発生したとのことです。

野津英滉という人が容疑者とされているようです。

さて、当然、殺意をもって人を殺せば殺人罪ですが、ボーガンの所持自体は銃刀法では禁止されていません。

銃砲刀剣類所持等取締法では、鉄砲と刀剣類の所持を禁止していますが、鉄砲と刀剣類の定義は以下のとおりであり、ボーガンはここに入りません。

「銃砲」=けん銃、小銃、機関銃、砲、猟銃その他金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲及び空気銃(圧縮した気体を使用して弾丸を発射する機能を有する銃のうち、内閣府令で定めるところにより測定した弾丸の運動エネルギーの値が、人の生命に危険を及ぼし得るものとして内閣府令で定める値以上となるものをいう。以下同じ。)

刀剣類=刃渡り十五センチメートル以上の刀、やり及びなぎなた、刃渡り五・五センチメートル以上の剣、あいくち並びに四十五度以上に自動的に開刃する装置を有する飛出しナイフ(刃渡り五・五センチメートル以下の飛出しナイフで、開刃した刃体をさやと直線に固定させる装置を有せず、刃先が直線であつてみねの先端部が丸みを帯び、かつ、みねの上における切先から直線で一センチメートルの点と切先とを結ぶ線が刃先の線に対して六十度以上の角度で交わるものを除く。)

 

2 なぜボーガンは銃刀法の対象とされていないのか

ボーガンはこれまでも事件に使われてきました。

その度にボーガンを銃刀法の規制対象にすべきという議論もありました。

例えば、平成20年11月14日の衆議院内閣委員会では、以下のやりとりがされています。

 

○泉委員 それで言うと、もう一つあるんです。これは矢です。洋弓、ボーガン、クロスボー、こういうものなんですね。
過去数年間、警察で把握、理解されているデータで結構ですので、洋弓を使った犯罪で件数などわかるものがあれば教えてください。

○巽政府参考人 それから、ボーガン、クロスボーの関係の事件の数でございますが、ボーガンが使われた事件の数、平成十四年はゼロ、十五年が四件、十六年がゼロ、十七年ゼロ、十八年が二件、こういう状況でございます。
ちなみに、平成十八年の二件は、傷害一件、器物損壊一件ということでございます。

○泉委員 ことしも、二〇〇八年二月に一人がけが。実は、新聞記事を取り寄せたら、一つ一つの事例が余りに無残な事件でありまして、余り言いたくないんですが、頭を撃ち抜かれたとか、本当にひどいものが幾つかあります。二月に一人けがされている事件が一件。もう一つは死亡事件、二月に一件。ことしのつい三日前には、洋弓で信金の職員がおどされて現金が三百万円奪われる。こういうものも含めると、幾つも事件はある。
あるいは、二〇〇〇年には、猫が八匹、矢で刺されて動物虐待という形、あるいは〇三年には、奈良公園のシカがボーガンでやられた。こんな事例も含めて、いろいろある。いろいろある中で、先ほど田端委員の質問では、ダガーナイフによる事件が幾つあったんだと。十九年から今日まで六件ということで、これは、ダガーナイフ、たくさんの事件の件数がありましたという話で、先ほどの質疑でもありましたけれども、洋弓も十分事件がたくさん起こっているというふうに思うんですね。
これは、確かに刃物ではないんです。銃でもないんですけれども、やはりこういったものもこの銃刀法の枠内におさめていかないと、どこでどうおさめるんだという話になると思うんですね。犯罪が起こってからは、それはもちろん取り締まりができますし、これを車に積んでいれば、その状況によっては凶器ということにもなるんでしょうけれども、しかし、全く野放しでいいんだろうかというのが私は非常に不思議であります。
この件について、現在の警察の考え方を教えてください。

○巽政府参考人 クロスボー等の弓矢の規制については、今後といいましょうか、これを使用した犯罪の発生状況などをよく踏まえた上で、必要性を慎重に検討する必要はあるというふうには考えております。
なお、現行法でもクロスボーは何らの制限もなく所持できるわけではなくて、隠して携帯するという場合には軽犯罪法に違反する。それから、十一の県におきましては、青少年保護育成条例によりまして、十八歳未満の青少年に対してクロスボーの販売が禁止されていると承知しているところでございます。

 

このように政府側は、ある程度ボーガンによる事件が発生していることを認識しつつ、犯罪の発生状況を踏まえた上で慎重に検討するという言い方になっています。

そこではボーガンの所持規制について支障があるとの説明もありません。

少なくとも今回、これだけの重大事件が発生したのですから、「これを使用した犯罪の発生状況などをよく踏まえた上で、必要性を慎重に検討する」という段階でないことは明らかです。

政府は速やかにボーガンの所持規制をすべきでしょう。

 

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