名誉棄損と特定可能性

さいとうゆたか弁護士

1 伊藤詩織さんが、はすみとしこさんを提訴

報道によると、ジャーナリストの伊藤詩織さんが、はすみとしこさんらに対し、名誉棄損による損害賠償等を求める訴訟を起こしたということです。

はすみさんがツイッターに投稿したイラストにおいて、枕営業等の表現を用いていたということなので、イラストが伊藤詩織さんのものだとすると名誉棄損が成立する可能性は高いでしょう。

ということで、ポイントは、イラストが伊藤詩織さんを描いたものかどうかということになります。

 

2 名誉棄損と特定可能性

名誉棄損は、被害者の社会的評価を低下させることから損害賠償等の対象となるものです。

よって、イラスト等における名誉棄損的表現が被害者に関するものであるという特定可能性がないと名誉棄損による損害賠償等は認められません。

SNSや掲示板では、伏字を使ったりすることがあるので、この特定可能性は多くの事件で見られる論点です。

例えば、イラストやマンガに関する事例としては、少年マガジンに掲載されたマンガにその顔に似せた登場人物(愚連隊のリーダー)を登場させられた人が少年マガジンの出版社を訴えた訴訟において、東京地裁平成22年7月28日判決は、以下のように述べて、原告とマンガの登場人物に特定可能性があるとしました。

「本件登場人物は,乙山が本件写真に基づいて作画したものであり,一見して本件写真の原告と極めて似ている上,その属性が原告の属性を連想させるものである」

これを伊藤詩織さんの訴訟との関係でいうと、伊藤さんとはすみとしこさんのイラストとがどの程度似ているのか、イラストに記載されている諸々(イラストの「沙織」と「詩織」の類似性、イラストの「Clap Box」と伊藤詩織さんの著書「Black Box」との音の類似性やBoxの共通性など)が伊藤詩織さんを連想させるかどうかが問われることになります。

その他、伊藤詩織さんが山口敬之さんを訴えた訴訟の判決があった時期にはすみとしこさんのイラストが公表されたというタイミングの一致も考慮されることになるでしょう。

なお、はすみとしこさん側は、イラストにフィクションと表示していたようですが、裁判例からしてフィクションと銘打っていたから名誉棄損にならないということはありません。

 

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