猫の島の猫を毒餌で殺傷した容疑で福岡県警が書類送検 動物に危害を加えた場合の法的責任 

さいとうゆたか弁護士

1 猫の島の猫を毒餌で殺傷として書類送検も不起訴

報道によると、80代の男性が、猫の島として知られる北九州市小倉北区の馬島の猫に毒餌を撒いて猫を殺傷したことで書類送検された、しかし6月25日不起訴処分となったと報道されています。

以下、被疑事実となったとされる動物愛護法と鳥獣保護法についてみてみます。

2 動物愛護法・鳥獣保護法について

動物愛護法第四十四条は、「愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する。」としています。

鳥獣保護法第八条は、「鳥獣及び鳥類の卵は、捕獲等又は採取等(採取又は損傷をいう。以下同じ。)をしてはならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。一 次条第一項の許可を受けてその許可に係る捕獲等又は採取等をするとき。二 第十一条第一項の規定により狩猟鳥獣の捕獲等をするとき。三 第十三条第一項の規定により同項に規定する鳥獣又は鳥類の卵の捕獲等又は採取等をするとき。」としています。

ここで「捕獲等」には、同法2条により殺傷を含むとされています。

ですから、許可等例外事由に該当しないのに、ネコを殺傷した場合、鳥獣保護法8条違反となります。

その場合、1年以下の懲役または100万円以下の懲役に処せられることになります。

実際の量刑に関して言うと、横浜地裁川崎支部平成24年5月23日判決は、「被告人が,猫の保護活動をしていた3名の被害者から殺傷する目的であることを秘して愛護動物である猫5匹を騙し取り,それらのうち,3匹を殺し,2匹を傷つけたという詐欺及び動物の愛護及び管理に関する法律違反の事案」について、殺害の態様が残酷である等として懲役3年執行猶予5年の判決を言い渡しています。

同事案の被告人は躁うつ病に罹患し、前科もありませんでした。

今回の事案については、詐欺という要素はないかもしれませんが、大量の猫を殺傷した可能性があり、また、毒餌を撒くという極めて残酷で危険な方法が使われています。
よって、起訴・正式裁判の上懲役刑(執行猶予)ということもありうる事例と考えられます。

実際に発見されたネコの死骸について80代男性の行為により死亡したものかどうか等の立証は簡単ではないと思われますし、男性はネコを殺すつもりはなかったと供述しているようです。

そのため不起訴となったのかもしれません。

今後手続きは検察審査会に移るようですので、市民の目によるしっかりした審査を期待します。

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