井筒八ツ橋本舗VS聖護院八ツ橋総本店訴訟の判決

さいとうゆたか弁護士

1 井筒八ツ橋本舗VS聖護院八ツ橋総本店訴訟の判決

報道によると、京都の八ツ橋業者である井筒八ツ橋本舗が、聖護院八ツ橋総本店に対し、元禄2年(1689年)創業という表示が事実と異なるとして表示をしないよう求めた訴訟について、本年6月10日、京都地裁は井筒八ツ橋本舗の請求を認めない判決を言い渡したとのことです。
判決は、歴史の古さは必ずしも消費行動を左右するとはいえない、元禄2年との表示が消費者の誤解を招くとは言えないと判断したようです。
聖護院八ツ橋総本店の創業年についての判断は避けたようです。

2 不正競争防止法の解釈

この訴訟は、不正競争防止法が禁止し、差し止めなどの対象とする、品質を誤認させる表示(不正競争防止法2条20号)に該当するかどうかが問われたものと思われます。
品質を誤認させる表示とされると、営業上の利益を侵害される者等は不正競争防止法3条により差止請求(侵害の停止又は予防)、4条により損害賠償請求をすることができる可能性があります。
この論点については、和菓子店の元祖という表示が品質を誤認させる表示に該当するかどうかが争われた、大阪地裁平成19年3月22日判決が判断を示しています。
同判決は、「ある種製品を最初に製造販売した人の製品が品質が劣り、顧客層の支持がなく間もなく製造販売中止となった後に、同種製品を別の人が製造販売したところ、それが品質優良で世の中に広まったとしても、その種製品の製造販売を『初めてしだした人』は、前者である。したがって、『元祖』について、『物事を初めてしだした人』の意味に理解する場合には、これを品質についての表示とすることはできない」などとして、「元祖」という言葉は品質に関わるものではないとしました。
元祖というのは古さと結びつく言葉ですから、古さは品質と結びつくものではないという意味も含む判決と言えるでしょう。
聖護院八ツ橋総本店が元禄2年創業と古さを売りにしていることについて、古さは消費行動を左右するとはいえないとした京都地裁判決は、上記大阪地裁判決と同様の判断であり、従来の裁判所の判断の延長線上にあるものと評価できるでしょう。
骨董品等、年代が大きな意味を持つ商品は別として、創業〇年、元祖などの表現は品質と関わるものではない、よって不正競争防止法による差し止めの対象とはならないとの判断が定着しつつあるように思われます。

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