面会交流ができない場合と慰謝料請求

1 面会交流の実現方法

非監護親が子どもと面会交流する条件が決まっていない場合、まずは面会交流の調停を家裁に申し立て、そこで面会交流について話し合うことになります。

そこで取り決められた面会交流の条件において、面会日時・場所・引き渡し方法等が具体的に取り決められている場合、監護親が面会交流をさせなければ間接強制(相手方に間接強制金を払わせることにより間接的に強制する方法)により面会交流を実現できる可能性があります。

そこで取り決められた面会交流の条件が具体的ではない場合、監護親が面会交流をさせないときには、再度面会交流の調停を申し立てて具体的な条件を取り決めるか、慰謝料請求をするかという強制方法が考えられます。

2 面会交流がなされない場合の慰謝料

面会交流拒否について慰謝料を認めた事例

例えば、熊本地裁平成28年12月27日判決は、以下のとおり述べて、面会交流がなされない場合において慰謝料の支払いを命じています。

前記事実関係によれば,被告Y1は,原告との間で,同人とAの面会交流について,第1回調停においてはおおよその回数を定めた上で,第2回調停においては年間の実施回数,おおよその時期,連絡方法並びに引渡しの時刻及び場所を具体的に定めた上でそれぞれ合意したことが認められるから,これらの調停に従って,面会交流を実施するために日時等の詳細について誠実に協議すべき義務を負うというべきである。
被告Y1は,上記のような誠実協議義務を負いながら,平成24年5月12日の面会交流の後である同年7月ころ,原告に対し,被告Y2を通して面会交流をさせない旨伝えた上,平成26年1月の第2回調停以降も,原告から被告Y2を通して多数の候補日を提示されていたにもかかわらず,面会交流の実施日を確定させることなく,同年7月3日に被告Y2を通して原告にメールで連絡したのを最後に,原告からの連絡や多数回の履行勧告に応答しなかったものであり,本件訴訟が提起された後である平成27年10月25日に面会交流が再開されるまで,こうした態度を継続させたことが認められる。こうした被告Y1の行為は,面会交流を実施するための協議を実質的に拒否したものというべきであるから,誠実協議義務に違反し,原告の面会交流権を侵害する不法行為に当たる。」

このように、面会交流について取り決めがなされたのにかかわらず、その具体化のための協議に応じず、履行勧告にも応じなかったことから、不法行為が成立するとして慰謝料を認めました。

約束条項しかない場合の慰謝料

他方、面会交流についての定めがあっても、それが「約束する」という約束条項、任意条項でしかない場合には、それに違反しても慰謝料が発生しない可能性があります。

東京地裁令和4年2月4日は、以下のとおり述べ、面会交流について約束条項、任意条項しかないことをも理由に、面会拒否について慰謝料が発生しないとしました。

本件間接交流審判の主文は,「以下の書面等を送付することを約束する。」という文言を用いている。通常,裁判所が作為を内容とする給付条項を定める場合は,「以下の書面等を送付する。」などと,給付条項であることを明確にした文言を用いるのが一般的であることからすれば,本件間接交流審判の主文は,任意条項を定めたものであることが明らかである。
これに,前記認定事実(4)の本件親権者変更等審判等事件の経過も考慮すると,本件間接交流審判は,その内容はある程度具体的であるけれども,飽くまでも未成年者の福祉を図る目的で,同審判主文に記載した方法による間接交流の方法を定め,当事者にその任意の履行を促したものと解すべきであり,これを超えて原告に対し不法行為法上保護に値する権利ないし法的利益である面会交流権を付与したものとまではいえない。被告が本件間接交流審判の主文に定められた書面等の送付を怠ったことは誠に遺憾であるが,このことが直ちに不法行為に該当するということはできない。

このように、合意や審判の文言によって慰謝料が発生するかどうか違いが出てくるので、注意が必要です。

面会交流について定めがない段階での面会交流拒否

また、東京地裁立川支部平成28年2月5日判決は、面会交流審判未確定の段階において、面会交流拒否に慰謝料を認めませんでした。

福岡高裁平成28年1月20日判決は、DVを受けていた元妻が、面会交流にその父の立ち合いを求め、それが元夫に拒否されたことから面会交流が実現しなかったことについて、義務違反はないとして慰謝料を認めませんでした。

ですから、面会交流拒否が不法行為として慰謝料請求の対象となるのは、面会交流について調停等で取り決めがなされていること、面会交流拒否に合理性がないことが要件となると思われます。

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