東京ディズニーランド再開と年間パスポートの取り扱いの法的問題

1 東京ディズニーランド再開と年間パスポート、年パスの取り扱いについての報道

報道によると、7月1日から東京ディズニーランド及び東京ディズニーシーが再開されるとのことです。

しかし、年間パスポートによる入場はしばらくできないとのことであり(年間パスポート所持者には抽選での入園の機会は確保)、年パス勢からは不満の声も出ているようです。

そこで以下、オリエンタルランドの対応に問題がないのか、法的に検討します。

2 年間パスポートでは入園できないことの法的問題

年間パスポートの購入サイトには、留意事項として以下の点が明記されています。

「地震、停電その他の自然災害やインフラの機能障害など当社の責に帰さない事由によりパーク運営に支障が生じ、または生じるおそれがある場合、当社の判断によりパークを休園し、または運営時間を短縮することがあります。なお、これによる補償や払い戻しはいたしかねますので、あらかじめご了承ください。」

新型コロナは自然災害ではないという解釈もありえますが、新型コロナの蔓延については運営会社の責めに帰さない事由により運営に支障が生じるおそれがあると言えるので、規約上はオリエンタルランドの判断でパークを休園することができることになると思われます。

しかし、問題は、休園できるという規定にしかなっていないということです。

上記規約からすると、6月まで年間パスポートを利用できなかったことについて法的問題はないということになりそうです。

他方、7月1日以降は、6月25日以降にサイトで販売されたチケットにより入園できる状態である以上、使用不可日以外について年間パスポートによる入場を拒否する合理性がない、使用不可日と休園日以外に年間パスポートでの入園を拒否する規約上の根拠がないということが問題となりそうです。

この点、債権法改正で設けられた民法548条の4は以下のとおり定めます。

第五百四十八条の四 定型約款準備者は、次に掲げる場合には、定型約款の変更をすることにより、変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし、個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更することができる。
一 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき。
二 定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。
2 定型約款準備者は、前項の規定による定型約款の変更をするときは、その効力発生時期を定め、かつ、定型約款を変更する旨及び変更後の定型約款の内容並びにその効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければならない。
3 第一項第二号の規定による定型約款の変更は、前項の効力発生時期が到来するまでに同項の規定による周知をしなければ、その効力を生じない。

同条は2020年4月1日の改正債権法施行前に締結された契約にも適用されます。

そして、上記規約は定型約款(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的である取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体)に該当すると思われますので、問題は1項1号か2号に該当するかです。

そこで、利用者一般の利益に適合するか、契約した目的に反しないか、変更の必要性があるのか、変更後の内容の相当性があるのかを検討します。

この点、年間パスポート利用者はパスポート期限の延長ができるので、入園して遊ぶという目的は達せられます。

年間パスポート利用者がそのまま入園できることになった場合、年間パスポート利用者が多人数入園し、新型コロナの蔓延を招く可能性もありえますので、その入園規制について必要性はあると思われます。

年間パスポート利用者については、払い戻しや期限延長、抽選への参加などの待遇が認められており、全体として著しく不利になるとは思われず、相当性もあると思われます。

これらの事情を総合した場合、1号ないし2号に該当し、定型約款変更として年間パスポート利用者が入園できないことは正当化される可能性はあると考えます。

ただし、形式的なことを言うと、約款変更という体裁が明確ではないことが気になります。

また、あまりにも年間パスポート利用者規制が長引くようであれば、二号の相当性が失われ、その処遇の違法性の問題が生じてくる余地があることにも注意が必要だと思います。

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