カルビーが単身赴任やめるのもOKに そもそも単身赴任は強制できるの?

労災、解雇問題

1 カルビーが単身赴任をやめてOKとの報道

報道によると、カルビーが7月1日から働き方を改革し、単身赴任をやめることもOKにするとのことです。

業務に支障がないと認められる場合に限定されているようですが、従来はほぼ会社の意のままに単身赴任させていた会社が多かったと思われるので、大きな前進と思います。

それにしても、そもそも会社が家族を引き離す転勤、単身赴任を強制することは許されることなのでしょうか?

2 単身赴任をめぐる判例

就業規則などで配転の権限が規定されている場合、その範囲内において配転命令は原則許されることになります。

しかし、濫用は許されません。

単身赴任にもなりかねない転勤命令について効力が認められるか争われた事件の重要判例が東亜ペイント事件最高裁判決(昭和61年7月14日)です。

同事件の事実関係は、以下のとおりです。

「本件転勤命令が発令された当時、母親(七一歳)、妻(二八歳)及び長女(二歳)と共に堺市内の母親名義の家屋に居住し、母親を扶養していた。母親は、元気で、食事の用意や買物もできたが、生まれてから大阪を離れたことがなく、長年続けて来た俳句を趣味とし、老人仲間で月二、三回句会を開いていた。妻は、昭和四八年八月三〇日に東洋紡績株式会社を退職し、同年九月一日から無認可の保育所に保母として勤め始めるとともに、右保育所の運営委員となつた。右保育所は、当時、保母三名、パートタイマー二名の陣容で発足したばかりで、全員が正式な保母の資格は有しておらず、妻も保母資格取得のための勉強をしていた。」

 

このように、当該労働者には地元に根をおろし地元から離れたことのない同居する老母、保育所で重要な仕事を任され保母資格取得のために勉強をしている妻、子どもがいたという状況でした。

単身赴任か、家族の犠牲か、二者択一を強いられる状況と言えるでしょう。

この事案について、最高裁は以下のとおり判断を示しました。

「使用者は業務上の必要に応じ、その裁量により労働者の勤務場所を決定することができるものというべきであるが、転勤、特に転居を伴う転勤は、一般に、労働者の生活関係に少なからぬ影響を与えずにはおかないから、使用者の転勤命令権は無制約に行使することができるものではなく、これを濫用することの許されないことはいうまでもないところ、当該転勤命令につき業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であつても、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもつてなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情の存する場合でない限りは、当該転勤命令は権利の濫用になるものではないというべきである。右の業務上の必要性についても、当該転勤先への異動が余人をもつては容易に替え難いといつた高度の必要性に限定することは相当でなく、労働力の適正配置、業務の能率増進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは、業務上の必要性の存在を肯定すべきである。」

つまり、業務上の必要性のない転勤、必要性があっても労働者に過剰な負担を課す転勤は許されないとしました。

そのうえで、最高裁は、以下のとおり述べ、当該事案では転勤は許されるとしました。

 「本件についてこれをみるに、名古屋営業所の金永主任の後任者として適当な者を名古屋営業所へ転勤させる必要があつたのであるから、主任待遇で営業に従事していた被上告人を選び名古屋営業所勤務を命じた本件転勤命令には業務上の必要性が優に存したものということができる。そして、前記の被上告人の家族状況に照らすと、名古屋営業所への転勤が被上告人に与える家庭生活上の不利益は、転勤に伴い通常甘受すべき程度のものというべきである。したがつて、原審の認定した前記事実関係の下においては、本件転勤命令は権利の濫用に当たらないと解するのが相当である。」

つまり、あっさりと転勤の必要性を認め、当該労働者の負担は「転勤に伴い通常甘受すべき程度のもの」としたのです。

この判断が今でも通用するのか疑問です。

新型コロナ対策でテレワークが普及し、そもそも事務所に行くことの意義が薄れつつあります。

また、夫婦2人とも職場で重要な役割を果たすという家庭が増え、一方の転勤は家族離別か他方のキャリア上の重大な損失をはらむリスクが高くなっています。

東亜ペイント事件最高裁判決は、夫が外で働き家計上一家の支柱であり、妻はせいぜい家計補助で働くという、昭和的価値観に基づくものと言えるでしょう。

到底、男女共同参画の理念が親展し、テレワークが普及しつつある現在において耐えることができないものだと考えます。

最高裁の古臭い判例は、カルビーの動きのような企業における実践により変容を余儀なくされることは疑いないと考えます。

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