遷延性意識障害・植物状態と治療費(交通事故)

さいとうゆたか弁護士

交通事故により遷延性意識障害となった場合、治療等に必要な治療費は賠償の対象となります。
しかし、実際には、効果が必ずしもはっきりしていない治療がなされることがあり、治療費の賠償が認められるかどうか争いとなることもあります。
その他、差額ベッド代も問題となります。
以下、解説します。

1 遷延性意識障害と脊髄後索電気刺激療法(DCS)

神戸地裁平成29年3月30日判決は、以下のとおり、首の骨の中に電極を埋め込んで,電源から弱い電流を流して脳を刺激する治療法である脊髄後索電気刺激療法(DCS)の治療費について賠償責任を認めました。

「被告らは,藤田保健衛生大学病院における脊髄後索電気刺激療法の症状改善への効果には疑問があるため,上記治療は,本件事故との相当因果関係を欠くと主張する。被告ら提出の意見書(乙58)によれば,遷延性意識障害の患者の首の骨の中に電極を埋め込んで,電源から弱い電流を流して脳を刺激する治療法である脊髄後索電気刺激療法(甲41,94)は保険診療で認められた治療法ではなく,意識障害の患者に対する有効性も十分に実証されていない。しかし,原告X1に対する施術は,藤田保健衛生大学病院の医師の医学的判断を経て行われたものである上,退院時には覚醒状態に明らかな改善があると評価されている(乙56の1〈8,1558頁〉)など,一定の効果があったとうかがえることなどに鑑みると,本件においては,その必要性及び相当性を肯定することができ,被告らの上記主張は採用できない。」

大阪地裁平成19年2月21日判決もDCSの費用の賠償を認めています。

2 遷延性意識障害・植物状態と個室・差額ベッド代

東京地裁平成12年9月27日判決は、以下のとおり述べて、将来のものも含め差額ベッド代の賠償を認めました。
「差額ベッド代は、被害者の治療のために必要かつ相当である場合に認められるものであるところ、本件では、①他の患者に対する迷惑を生じさせないために必要であると考えられること(丙一三)、②Cには常時介護が必要な状態であって、親族や職業人による毎日の介護費用や自宅での生活を前提とした家屋改造費用等が当然損害として計上され得るものだが、Cは、今後とも現在の入院生活を継続することを前提に、隔日の親族による介護費用の請求にとどめ、職業人による介護費用、家屋改造費用を請求していないこと、③Cの入院は療養型のそれであって、将来継続して入院するかどうか疑問がないわけではないが、現に入院し、それが今後とも継続すると見込まれること、からすると、差額ベッド代を認めるのが合理的かつ相当である。」

将来分の差額ベッド代まで認める裁判例は多くはないものの、遷延性意識障害においては差額ベッド代の賠償が認められやすいと言えます。

3 遷延性意識障害・植物状態と症状固定後の治療費

1で紹介した神戸地裁は判決では、症状固定後のDCSの費用も賠償が命じられています。
効果や必要性がある場合、症状固定後、さらには将来の治療費が賠償の対象とされることもあります。

 

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