ふるさと納税訴訟で泉佐野市が最高裁で逆転勝訴

さいとうゆたか弁護士

1 ふるさと納税訴訟で泉佐野市が最高裁で逆転勝訴

報道によると、最高裁において、ふるさと納税に関する訴訟に関し、泉佐野市が逆転勝訴したということです。

報道では、過去の寄付の集め方をさかのぼって基準に組み入れ、対象から外したのは違法だと判断したようです。

2 大阪高裁判決はどうだったか?

この点、大阪高裁令和2年1月30日判決は、以下のとおり述べ、総務大臣において過去の寄付の集め方を遡って基準として、泉佐野市を対象から外したことは法律による委任の範囲だとしていました。

まず、大阪高裁は、「返礼品競争が加わることにより,地方団体全体の財源の総額の増加は見込まれないのに,返礼品の調達費用を含む募集経費としてそこから流出する金額がますます増加し,結果として本来の特色ある事業など公の支出に充てることができる総額も減少するという事態」を防止するために指定制度が導入されたと説明します。そのような制度趣旨であることを示す国会での議論もなされていたとします。つまり、指定制度の趣旨は、ふるさと納税における過剰な豪華返礼品などの行き過ぎの是正ということです。

その上で、大阪高裁は、以下の通り判断しました。

「原告は,本件指定制度の趣旨は指定対象期間における健全かつ公正な制度運用の実現が目的であって,本件告示が,過去の募集態様とその結果をもって「直ちにかつ一律に」不指定団体の要件としたのは,上記委任の趣旨の範囲を超えるものであって,本件勧告もその旨を指摘すると主張する。」
「原告の上記主張は,本件告示2条3号に定める募集の適正な実施に係る基準は将来の指定対象期間における募集の適正な実施を確保することがその趣旨であるとの前提で,地方団体の指定に当たり,指定対象期間における募集の適正な実施を確保するためには,その意思と能力の有無を認定するための一資料として過去の募集態様を問題とすれば足りるというものと解される。」
「しかしながら,本件指定制度の導入経緯とその趣旨は前記にみたとおりであり,本件制度において募集の適正な実施を確保するためには,指定対象期間における募集の適正な実施のための直接的な法規制のみならず,本件制度が陥った悪循環を脱し,本件制度の正常な運用を回復することも必要であると解されるから,指定対象期間における適正な募集を行う意思と能力の有無の認定資料の一つとして過去の募集態様を問題とするだけでは足りず,本件指定制度発足当初は前記の悪循環の発生と関連する諸要素を解消した地方団体だけで本件制度を運用することとし,前記(4)イ(イ)で挙示するような悪循環に関連する諸要素を解消・改善した地方団体であることや,これと関連を有しない地方団体であることを一律に条件と設定したとしても,不合理とまでいうことはできず,これが委任の趣旨の範囲を超えるとはいえない。なお,国地方係争処理委員会の本件勧告も,「直ちにかつ一律に」不指定団体の要件とすることにつき上記委任の趣旨の範囲を超える「おそれ」を指摘するにとどまり,違法と断ずるものではない。」

つまり、総務大臣において、過去の問題行動がない自治体ということを指定の基準とすることは、法律による委任の範囲に含まれるとしたのです。

しかし、国会で過去の行動まで基準に組み入れることが許されるとの議論がされたかどうかについて大阪高裁は示していません。立法過程で明確に委任の範囲に含まれるとはされていないものの、行政に広い裁量があるので、ふるさと納税の行きすぎを是正するという指定制度の趣旨を実現するため、過去の行動を基準に組み入れることも許されるとしたものです。

3 最高裁判決

今回の最高裁判決は、ふるさと納税の指定基準において過去に行き過ぎがあった自治体を排除するかどうかは自治体の不利益が大きいので国会が決めるべきものである、しかし国会で過去に行き過ぎがあった自治体を基準で除外するところまで議論はされていない、よって、過去に行き過ぎがあった自治体を基準から排除することは法律の委任の範囲を超えるとしました。

最高裁と大阪高裁とは、そもそも過去の行動を理由に基準から外すかどうか、国会が決めるべきことか、総務大臣が決めるべきことか、その判断が異なっていたということになります。

今回の最高裁判決については、過去の行動を理由とした不利益、つまり後出しじゃんけんについて慎重な姿勢を示したものであり、自治体の行動の予測可能性を高めるものとして評価できます。
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