遷延性意識障害・植物状態と家屋改造費用(交通事故)

さいとうゆたか弁護士

1 交通事故と家屋改造費用

交通事故で重度の後遺障害が残った場合で、被害者が在宅で暮らす場合、家屋改造が必要となることもあります。

そのような場合、家屋改造費用が賠償対象となることがあります。

 

2 遷延性意識障害・植物状態と家屋改造費用

交通事故で遷延性意識障害・植物状態となった場合でも家屋改造費用の賠償が認められることがあります。

例えば、神戸地裁平成16年7月7日判決は、以下のとおり、遷延性意識障害の被害者を介護するには、従来の住宅では廊下が狭い、上り口に段差がある、身体障害者用の入浴設備がないなどとして、増改築費の賠償を認めつつ、そのうち約4割のみの賠償を認めました。

「証拠(甲12,14,証人B)によれば,原告X1の自宅は,同原告を介護するには,廊下が狭い,玄関の上がり口に段差がある,身体障害者用の入浴設備がないなどの問題があり,同原告を適切に介護するには増改築の必要があることを認めることができる。」
「そして,既存建物とは別に新築した場合の工事代が2331万円であるとする見積書(甲7)が存在するけれども,その計画されている建物の床面積,間取り等に照らし,そのうちの約4割に当たる930万円を本件事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。」
「なお,既存建物を増改築した場合の見積書(甲13)も存在するが,その計画の内容が原告X1の介護にとって必要適切なものであるかどうか,その記載のみから判断し難いので採用することができない。」

また、千葉地裁佐倉支部平成18年9月27日判決も、以下のとおり、自宅介護費用の賠償を認めつつ、改造は家族の便益にも資するとして、エアコン取付、床暖房、システムキッチン。洗濯バン取付等について減額の必要があるとして、原告主張額の9割の家屋改造費を認めました。

「原告らは、家屋改造費用として二六三六万七〇〇〇円を要するとの改築工事提案書(甲四五)を提出するところ、その内容は、原告一郎の自宅介護に必要な改造工事として、基本的に相当であると認められる。」
「他方、家族の便益を根拠とする減額が必要であるとの被告の主張については、エアコン取付・床暖房工事・システムキッチン・洗濯パン取付等に関しては、原告一郎の介護に有益であるとしても、これらにより家族が便益を受ける面も否定できないから、本件事故と相当因果関係のある家屋改造費用としては、原告ら主張額の約九割に相当する二三七〇万円をもって相当とみるべきである。」

 

このように、遷延性意識障害の被害者の在宅介護に必要な家屋改造費は損害賠償の対象となりえますが、それが恒久的な性質を持つこともあり必ずしも全額が賠償の対象になるわけではないということになります。

 

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