ツーブロック禁止校則、墨染め強要、肌着の色で持ち点減点の違法性

さいとうゆたか弁護士

1 髪型や肌着と校則、

東京都議会予算特別委員会で、教育長がツーブロック禁止校則について不合理な理由で擁護しているとして大きな反響を呼びました。

2021年2月16日には、大阪地裁は、高校による墨染め強要について判断をしました。

2021年5月19日には、大分県の公立中学で、肌着の色により体育祭で減点がされるとの報道がなされています。

ツーブロック禁止校則や墨染め強要、肌着の色の監視、つまりこのような衣服や髪型の強制は許されるものなのでしょうか?

2 髪型についての裁判例

この点、熊本地裁昭和60年11月13日判決は、いわゆる丸刈り校則について以下のとおりの判断を示しています。

まず、「本件校則の内容が著しく不合理であるか否かを検討する。確かに、原告ら主張のとおり、丸刈が、現代においてもつとも中学生にふさわしい髪形であるという社会的合意があるとはいえず、スポーツをするのに最適ともいえず、又、丸刈にしたからといつて清潔が保てるというわけでもなく、髪形に関する規制を一切しないこととすると当然に被告町の主張する本件校則を制定する目的となつた種々の弊害が生じると言いうる合理的な根拠は乏しく、又、頭髪を規制することによつて直ちに生徒の非行が防止されると断定することもできない。」として、丸刈りを強制する合理性が高くないとします。

ところが、同判決は、丸刈りについての社会通念、丸刈りにしない場合の強制もないことから、丸刈り校則も違法ではないとしています。

3 ツーブロック禁止校則や墨染め強要は認められるべきか

上記の裁判例からしても、ツーブロックにした場合に制裁があるような校則、墨染めの強要であれば違法とされる可能性が高いでしょう。
問題は、そこまでの規制をしない場合です。
そもそも子どもも含め、人は自己決定をすることができます(憲法13条)。
その一環として髪型の自由も認められます。
この自由は無制約ではありません。
また、未成年者については、その判断に任せることにより未成年者自身を害するような場合には成人には許されない制約も許されることになります(限定されたパターナリスティックな制約)。
そうはいっても、ツーブロック禁止校則について教育長の述べる理由(事故に遭う可能性が高くなるなど)は一見して合理性がないようにも思われますし、現代においては生徒について特定の髪型を強制するという習慣はかなり稀になっています。よって、髪型の自由を禁止することを正当化するような事情が見当たらないように思われますし、そのような状況下においてツーブロック禁止校則については違法性、違憲性の疑いがあると言わなくてはならないと思います。

地毛を墨染めすることを求めることも同様に正当化する理由は希薄と思われます。

4 肌着の色で持ち点減点は認められる?

上記とはやや問題状況が異なるのが、肌着の色で体育祭での持ち点減点をするとの大分県の公立中の事例です(2021年5月19日の西日本新聞報道)。

これは学校ではなく、生徒会が決めてやっているとのことです。

学校という公権力が行っているのでなければ、ただちに自己決定権を侵害するとは言えないとも思われます。

しかし、肌着の色という、プライバシーの内奥に位置する問題を点数評価の対象とすることは、やはり自己決定権の尊重の理念とは相いれないと言わなくてはなりません。

生徒の代表である生徒会の意見の尊重という要請もあるでしょう。

しかし、学校側としては、肌着の色を点数評価の対象とすることが自己決定権の尊重の理念との関係で問題がありうることについて生徒会に問題提起をするなどすべきではないでしょうか。

学校教育法21条は、普通教育は、自主自律の精神を養うことを目的とするとしています。ここでいう自主自律の精神には、自分たちのことをみんなで決めるということの他に、自分自身だけで決めるべきことは他の人に介入させず自分で決めるということも含まれると考えます。それこそが自己決定権です。生徒会が決めたことだから放置というのでは、学校としてはその役割を果たしているとは言えないでしょう。

 

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